文句なし。面白い!一気読み。
恩田陸さんの、瑞々しさとスピード感はいつもながら。
国際ピアノコンクールの一次予選から最終選考までの物語。
この手の物語だと、選考が進むにつれて描写が長〜くなってきがちだと思うけれど、この作品ではむしろ逆。
コンクールを誰が勝ち抜くのかということより、コンクールという特別な日々の中で、4人のピアニストたちが、お互いの音楽にふれあい、急激に、鮮やかに花開いてゆく過程の物語だから。
亜夜。
マサル。
明石。
そして、塵。
亜夜は、自然も人の営みも全てを楽しむ鳥のよう。
マサルは、山の頂にあって、力強く揺るぎない。
明石は、地上の普通の人々の隣に。
塵は、まさに神の視点から。
世界は音楽に満ちている、と作中にあるけれど、世界から音楽を引き出し、楽譜に表現し、奏でるという、関わったひとそれぞれの在り方によって、また音楽は無限に広がっていくんだと、4人が教えてくれる。
凡人の身では、彼らのようには音楽を受け取る事は出来ないとしても、音楽は特別な力を持つ、素晴らしいもの。
クラシック音楽の知識がないことが、こんなに残念だった事はないかも。
巻末のオマケにでも、4人の選んだ曲のリストがあったら、曲を聴きながらもう一度味わいたいと思う。
もちろん、できることならぜひ、恩田さんの脳内イメージで選んだ演奏で!
それにしても不思議なタイトル。
私は、塵が、地上にあって人の間で音楽を奏でて生きていくためにある両極のもの、と感じた。
人のささやかな営みに愛を感じさせる「蜜蜂」と、神が自然を通して無慈悲な運命を告げる「遠雷」。
どちらにもふれているから、塵の演奏は天上と人の間をつなぐことができるのではないかなぁ。
- 感想投稿日 : 2018年11月7日
- 読了日 : 2018年11月5日
- 本棚登録日 : 2016年10月22日
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