外科の夜明け (講談社文庫)

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5

図書館で借りた。

麻酔のない時代から、麻酔が実用化されて感染症の仕組みが理解され、心臓まで手術ができるようになるまでの物語。

事実をただ挙げていくのではなく、ひとりの架空の人物の目を通して上記の変化を追っている。この変化はちょうどヒトの一生の中で起きたことがよくわかる。
麻酔のない時代の手術はできるだけ早く切断することが医師の役目のようだった。患者の叫び声が手術室に響いていたらしい。
麻酔が発見されてから受け入れられるまでの発見者たちの苦悩や、なかなか受け入れようとしない医師たちの様子を見ていると、科学が客観的な学問ということに疑問が浮かぶ。どんなに理屈で説明しても当時の常識と合わなければ、人々を説得するのが難しいならば主観で信じるか信じないかの話ではないのか?

麻酔のあとに感染症の仕組みが分かってきたことも悲劇の一つだと初めて知った。麻酔がなければ長時間開腹したままにできないし、痛がるから体の奥までメスは及ばなかったけれど、それができるようになったことで炎症が頻発した。消毒の概念がまったくなく、ある患者の膿や血をつけたまま他の患者を診ていたらしい。
ここでも殺菌の方法を見つけた人は認められずに苦悩している。

自分たちが当たり前に受けている医療の前時代がどういうものかを知ることは、災害時にどのような医療が可能かという話題にも共通するように感じる。現在は衛生に関する教育がなされているから当時ほどひどくはならないだろうけど、滅菌できないなら下手に切開できないように思う。
また、科学の進歩が目の前で起こったときに、柔軟に受け入れられるような人間でいたいと考えさせられた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 医療
感想投稿日 : 2013年8月30日
読了日 : 2013年8月30日
本棚登録日 : 2013年8月25日

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