春にして君を離れ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

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レビュー : 368
よえりんさん 小説   未設定

アガサ・クリスティの小説。この小説はミステリーじゃない枠ですが、ミステリーだと感じるところも。
私にとって読み終わっていちばんミステリーだったのはロドニーの気持ち。

いろんな違う環境、立場隔たりのある人々のなかで、ジョーンは娘の家族を見舞う旅で祈り(祈っちゃったから神さまが叶えちゃって)回心にたどりつく。

この物語の下敷きには、シェイクスピアのソネット(14行詩)がある?この物語を暗唱したり読んで育ったふたりの言動や想いに影響を与えているんじゃないかって、ソネットをゲットしてみてやっぱりそう思います。小説を読み終わってもなんだかモヤモヤしてて、ソネットも読んでみてやっとこの小説が終わった感がある。
この小説は、ソネットへのオマージュという風にも思えるし、その影響力への風刺という風にも思える。ソネットをもっとしっかり読むとまた違う感想があるかも。

小説のなかの「シェイクスピアも人の子」っていう言葉がとても好き。

結婚は契約で連帯の意図の証明という言葉も。

それから、ジョーンの両親のお話あたりから「母のようになれば子どもは苦しむと思ったんじゃないか」と考えが変わって、ジョーンに対する私の気持ちの大切な転換点だった。

ジョーンの女学院のギルビー先生の言葉も好き。的確な考察を贈られているからといって素直にキャッチできたら苦労はしなくて、わかっていながら逆らってしまう自分もいる。ちょっとジョーンに同情も。

それから、誰かが一緒に歩いているような気がするけど誰もいないっていうシーンを読んで、足跡がひとつしかない、でもそれはキリストがあなたを背負って歩いていたからだっていうお話を思い出して、次の展開がわかった気がする。

ブランチの、あなたへの借金ふみたおして気になんかするもんですか、に「ブランチ・ハガードなるほど感」が増した。そらあかん。
最後に憧れのオリエント急行がでてきてドキドキ。出会うサーシャを最初はスパイかと思った。心情を的確にキャッチ、主人公が吐露すると彼女のイギリスをdisりはじめるから。でも、理由はその章を読んでしまうまでわからない。知ると納得することで、背景や理由も知らずに言葉の行方を決めるのは危険なことだと最後までこのお話は伝えていた。

最後のロドニーの言葉は、ジョーンへの憐憫にとれる言葉で終えている。その彼女が回心という大きな恵みを受けたことを気付かないという真実はこの物語の肝?

ジョーンは誰の決断も尊重しない。彼女の価値観だけが彼女のものさし。それにジョーン以外の誰もが気付いていることがなによりの救い。回心は彼女にしかできないから。補いあって保たれているこの家族に、結婚は契約という言葉がとても響く。

レビュー投稿日
2019年4月20日
本棚登録日
2019年4月20日
14
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