最初から最後まで納得がいかなかったし、読み返せば読み返すほどにイライラする。
そもそも心因性で声が出ないという主人公に対し「言葉を失っている」という書き方はあまりに雑ではないか。
書くことも読むことも聞くことも、ひいては「著者が書いている」通りに「言葉で思考している」にもかかわらず。
そこに対してのエクスキューズも一切ない。エクスキューズがないのは良いとしても、ただ単に設定として利用していたのだろうなという印象。確かに声の出せない女と目の見えない男性のプラトニックで詩的な関係はロマンティックだものね。
「しゃべることができない」だけでは「言葉を失った」ことにはならないだろう。言葉を失っている状況を言葉で描写するという試みがされているわけでもない。
そうなってくるとボルヘスの使われ方も癪に障るというものだ。中動態に関してもそう。たんなる盛り上げ装置かよという印象。カラオケのタンバリンか。
静かに呼気を抑えた筆致は結構好きで、『菜食主義』も面白く読んだけれど、なんか中身スカスカなのでは疑惑があるので、もう読みません。
でもこの本に対するもやもやというか納得のいかなさをどうにかしたくて、失語症と中動態に関する本を買い、そちらは楽しめているので良かったことにする。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
海外文学
- 感想投稿日 : 2018年8月1日
- 読了日 : 2018年7月31日
- 本棚登録日 : 2018年7月29日
みんなの感想をみる