亡命者が語る政治弾圧 中国を追われたウイグル人 (文春新書)

著者 :
  • 文藝春秋 (2007年10月19日発売)
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レビュー : 13
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中華人民共和国、すなわち中国共産党による少数民族弾圧問題といえばたいていの日本人はチベットの事が頭に浮かぶだろう。チベット問題も深刻ではあるが、それと同じもしくはそれ以上に新疆問題も深刻な状況に置かれている事はあまり日本では知られていない。少なくとも欧米諸国に比べて新疆問題に対する認識は非常に薄く、したがって問題への対応努力は殆どなされていなのが実情だろう。
本書は著者のフィールドワークや、新疆関係者への地道なインタビューに沿ってまとめられた新疆問題の俯瞰地図である。少しでも新疆問題に関心はあるが、あまり学術的ではなくとっつきやすい問題の解説本を求めているのであれば本書はかなりオススメの一冊である。
前述のようにそもそも日本では新疆問題に関する情報が少なく、こういった書籍を地道に当たっていく以外に問題の内実を知るすべがない。こういった問題を解決に導くには問題に対する認識が広く普及する事が欠かせないので本書のような本が増える事を願うばかりである。
本書を読んで共産党の民族問題に対する対処は益々よろしくないと思うばかりである。9.11テロの後、イスラム過激派が主導したということを共産党は「わざと」誤解して々イスラム教徒であるウイグル人をテロリスト呼ばわりしてきた。テロ当時、日本のメディアもこぞってイスラム過激派が全てテロリストであるかのように報道し、共産党よろしくイスラム社会への悪影響を担う一端となっていた事が記憶に新しい。そもそもウイグル問題もまともに扱えない日本のメディアがイスラム社会への論評を展開する事は馬鹿げているようにしか思えない。
イスラム教徒自体は全世界で10億人を超えていると推定されており、決してマイノリティとは言えない。しかしながらイスラム圏に属する民族はキリスト教系民族と異なり、文化や国家背景が異なる少数民族に分担されてしまっている経緯もあるせいで結果として「イスラム少数民族」というカテゴリが発生しやすいのだと思う。
少数民族問題(特に中国共産党の)やイスラム問題に興味のある人は是非一読を進めたい書籍である。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 政治
レビュー投稿日 : 2012年5月12日
            読了日 : 2012年5月11日
      本棚登録日 : 2012年5月12日

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