サッカー戦術クロニクルII

著者 :
  • カンゼン (2009年9月2日発売)
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感想 : 17
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サッカーを戦術的に観戦する視点を高める一貫として本書に興味を持った。結果としてその考えは完全には満たされなかった。本書は現代戦術についてメインには取り扱っておらず、むしろ過去の戦術(1972年西ドイツ等)から現在の戦術(ガスペリーニのジェノア等)に至るまでの歴史書という扱いが妥当である。もちろん、これはこれで面白い。
基本的にサッカーというスポーツは他のスポーツに比べると「戦術」という概念が幼稚であると言われる。たしかにその通りだとは思うが、だからこその面白さがある。戦術が革新、変化されるタイミングというのは殆どの場合が「既存の戦術が破壊された時」であり、その破壊される様と新たな戦術が創造される様子は観戦者にとって大きな楽しみであるといえる。
しかしながらサッカーの戦術というのは理解するのが難しい。個人的な間隔として難しいというより「認識しづらい」という方がしっくりと来る。これはサッカーが野球等と異なり攻守が明確に別れておらず流動的に攻守が入れ替わる事が大きく関係しているだろう。守っている時も攻める場合を想定したり、逆もある。もちろん、守ってる時はある程度あきらめて攻撃に全精力を傾けるチームも有るなど様々だが、素人(玄人もか?)が試合観戦を通じてチームの戦術をしっかりと理解するのは難しい。だからこそサッカー観戦後の議論というのは大いに盛り上がるものだと思う。
さて本書は次回の日本代表戦を見る上での戦術理解に役立つかというとそうでもない。歴史書を読めば直近の政策立案に役立つわけではないように即効性のある内容ではない。しかしながらこれからサッカーの戦術理解を深めていく上で「過去に何があったのか」という事を知っておくのは有意義だと言えるであろう。実際に1972年の西ドイツの戦術は読んでるだけでワクワクするような内容だ。この考えの本質自体は現代戦術、例えばいまのバルセロナなどにも受け継がれていることが見て取れる。
サッカーをより深い理解で持って観戦する事を希望するならば一度は読んで置いて損は無い本だろう。ただ、戦術本なので図解による説明やケーススタディをもう少し盛り込んでも良かったのではと思うところがちょっと残念な点だ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: スポーツ
感想投稿日 : 2012年3月25日
読了日 : 2012年3月25日
本棚登録日 : 2012年3月25日

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