星の王子さま

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本棚登録 : 385
レビュー : 45
制作 : 浅岡 夢二 
yomikaさん 海外古典   読み終わった 

「孤独の星の住人にならないために。」

 小さな星から地上に降ってきた星の王子様との出会いは、子供の心を忘れかけた「ぼく」に様々なことを思い出させ、教えてくれた。それは何十年ぶりかにこの物語を手にした読者へも同様に。

 子供の頃プレゼントとして本書を戴き確かに読んだ記憶はあるのですが、印象としてはヘビに飲み込まれた象とバオバブの木のことくらいしか残っていませんでした。このたび何十年ぶりかに星の王子さまに再会し、ああこんなに示唆に富む話だったのかと、改めて感じ入りました。

 全編に流れる言いようの無い寂しさに、人は本当に孤独な生き物だと思い知らされます。星の王子さまが住んでいるのは一軒の家ほどの小さな星。そこに二つの活火山と一つの休火山があってあとは一輪のバラの花が咲いています。一方彼と知り合うことになる「ぼく」は地球の住人ながら、砂漠の真中に独り不時着し、頼る人ももなく飛行機を修理する身の上。本来ならばこの星には「ぼく」の他に本書の流れで言うのなら20億という人間がいるはずだというのに、砂漠上に今、星の王子様とただ二人というこの寂しさはいったいどうしたことでしょう。

 今ここにある孤独は住人が一人の星からきた王子様も20億の住人がいる地球の「ぼく」もなんら変わることがないのではないでしょうか。そこに生じた共感から生きとし生けるものと絆を結び友達を作りたいという願いが生まれています。多少気難しくとも何らかの関係を結んだかけがえの無い一輪のバラ、絆を結ぶ大切さを教えてくれたキツネの話が活きてくるのですね。

 さて何十年ぶりかで本書を読んだ自分は―といえば…。目の前のことにのみ追われ、頭がこちこちのまま、生きることにあくせくしていないか。家来が一人もいない王様や、点けて消すだけを繰り返す点灯夫、酒を飲んでいることを忘れるために飲む酔っ払い、うぬぼれる相手さえいないうぬぼれやや何も知らない地理学者になっていないか。大人は知らず知らずのうちに自分という孤独の星の住人になっているのかもしれません。

 星の王子さまの物語はだからこそ意味があります。自分独りの小さな星を飛び出して自分以外の様々な者と絆を結び生きるということ。いくつになっても、決して孤独の星の住人になってはいけないのだと。命を懸けた王子さまの冒険がそれを教えてくれるのです。

レビュー投稿日
2014年1月13日
読了日
2014年1月13日
本棚登録日
2014年1月13日
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