切支丹の里 (中公文庫 A 16-3)

著者 :
  • 中央公論新社 (1974年4月10日発売)
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感想 : 12
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長崎の歴史文化博物館でも、現在は切支丹弾圧時に用いられた「本物の踏み絵」を見ることができます。摩滅してしまった踏み絵の足指の痕から、その昔の遠藤周作は何を感じたでしょう。『沈黙』や『イエスの生涯』が生まれるよりも前、遠藤周作は何度も長崎を訪ね、「まるで故郷に戻ってきたような気持ちになる」と書いています私自身にはギリギリで思い出される、幼少期の鮮明な故郷の様子。実際の知人の名前も見ることができて、それで余計にわが思い出も立ち上がってくるように思える。聞こえてくる会話も、ほとんど完璧な長崎の言葉。そのような、私にとっては少し特別な、他に変えられない本。せつなく懐かしい1冊。遠藤周作氏は、ここに書かれているような「切支丹の長崎(県)」を繰り返し経験して後、『沈黙』『女の一生』などを書いたのです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2010年6月21日
読了日 : 2010年6月21日
本棚登録日 : 2010年6月21日

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