デービッド・アトキンソンさんの本。
「マル激 トーク・オン・デマンド」といういつも観てるインターネットニュースで本人の話を聞いて、すごく面白かったので手に取った本。
いやー、目から鱗が落ちまくりでした。
マル激の中でも、「実は日本の高度経済成長は人口が増えただけだった」という衝撃の事実を聞いたのもビックリだったけど、この「最低賃金が上がっていないことが日本の低成長の原因」という話も新鮮だった。
何より、最近経済の本を複数読んでて、財政再建派の人やリフレ派の人の話がどうにも納得できなかったのが、この本読んですごく腑に落ちた。
(つまり、この本は「経済」の本)
財政再建派に比べると、まだリフレ派の話の方が納得できるとは言え、どうにも不信感がぬぐえなかったのだけど、その理由もはっきりした。要するに、借金(国債)を返せるかどうかの話ではなく、リフレ派の話は、今後も人口が増加し続け、かつ世界の中でもかなり特殊な国「アメリカ」を想定した話でしかない、ってことが違和感の正体だったわけだ。だからこそ、物価が上がった現在も賃金が上がらずデフレを脱出できていない。日本は人口が減り続けてるので。
(しかし、本当に日本の知識人ってアメリカしか見てないんだな。。)
この本を読めば、これからの(バブル後の)日本はアメリカを手本にしても意味がないことがはっきりわかる。なぜなら、日本はこれから少子化と高齢化のダブルパンチを食らうからである。アメリカとは全然状況が違う。
ただ、リフレ派の人たちが言ってることや、この本で語られてる問題の本質は同じように思う。
「経営者」だ。
もっと言うと「無能な経営者」だ。
バブル崩壊以降、ひたすら賃金カットだけを行い、政府から優遇(甘やか)され続けた経営者が、この低成長の一番の原因である。
この本の提言では、まず強制的な最低賃金UPにより経営者に生産性向上の圧力をかけて、さらに、成人の「再教育(スキルアップ)」が重要と説く。特に経営者の「意識改革」が重要。バブル期の成功体験がいまだに忘れられない世代が日本のガンだと常々思ってたけど、この本読んでさらにその思いを強くした。
そう考えると、現状の政策は色々おかしい。
外国人労働者の受け入れ拡大は、労働賃金のさらなる低下を招くだけだし、働き方改革や女性活躍も、「社会政策」の意味合いが強くて、「経済政策」という位置づけではない。これは、この本でも語られているように、「最低賃金」は経済産業省ではなく厚生労働省の管轄、というのも、確かに大きな要因だと思える。
個々の政策がチグハグで何というか方向性がない。
これからの問題に対処するために「経済成長をしよう」という方向性がまず重要。
そのための賃金UPであり、生産性向上であり、それが、年金・医療・社会保障費や借金の問題改善にもつながる。
今の政策では、今まで同様、経営者を甘やかすだけである。
次の選挙では、この争点で政策を訴える候補者に投票しようと思う。
(・・いないかもしれないが。。。)
- 感想投稿日 : 2019年4月1日
- 読了日 : 2019年4月1日
- 本棚登録日 : 2019年3月31日
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