1970〜1972年、著者の萩尾望都さんは、上京して大泉にある二階建ての借家で暮らし始めた。同居人は竹宮惠子さん。
後に『大泉サロン』と呼ばれるようになる若手新鋭少女漫画家達の集まりである。
萩尾さんたちが暮らす家には多くの駆け出しの漫画家が集まってきた。二人の漫画家のアシスタントとしてだったり、遊びに来て漫画について語ったり。
24時間、いつだって漫画について語れる楽しい場所だった。はずなのに。
◇
この本には、萩尾望都さんの立場で、同居していた頃のことが書かれています。
この本を読む限り、萩尾さんの気持ちを考えると辛いです。
大泉の家に次々と若手の少女漫画家が集まって、沢山の作品を生み出し、様々な交流があって、萩尾さんも楽しい日々だったと回想していらっしゃいます。
貴重だった大泉での時間。その後上井草に引っ越して、さらに竹宮惠子さんから言われたことがきっかけで上井草も離れて、埼玉の緑深い田舎に引っ越したこと。
「個性のある創作家が二人、同じ家に住んではだめなのよ」
木原敏江さんのこの一言が全てではないのかなと思っています。
萩尾さんと竹宮さんの対立構図のように表面的に見えるけれど、お互い漫画家としてのリスペクトはあるのだと感じます。
そして道が離れてしまったことも、宿命であったのかもしれません。
萩尾さんの、もうそっとしておいてほしい、今は今で静かに過ごしたいという気持ちがなんとも……。
非常に難しいものだなあと辛くなりました。
- 感想投稿日 : 2022年6月2日
- 読了日 : 2022年6月2日
- 本棚登録日 : 2022年6月2日
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