ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを (ハヤカワ文庫 SF 464)

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レビュー : 62
養老まにあっくすさん  未設定  読み終わった 

この本が書かれた当時、まだ「格差社会」という言葉はなかった。にもかかわらずヴォネガットは、資本主義によってごく少数の人々にグロテスクなまでに富が集中し、一割の人間が、残りの九割が一生かかっても手することのできないお金と特権と享楽を手にするという未来を、正しく予見していた。
そのようなマンモニズムの世の中で、億万長者の一人が無上の隣人愛に目覚めたら?それがこの小説の主人公エリオット・ローズウォーターである。のらくら者やごろつきどもに愛とお金を惜しまないエリオットは、本書では気違いとして描かれる。しかし、読者はやがて気づくことになる。彼を気違いのように見せているものは、この社会の仕組み──つまり富の独占を善とする経済のあり方ではないのか。人間を勝者と敗者に分け、敗者を「努力せざる者」として切り捨てる社会。その歪みこそが、エリオットを「気違い」として浮かび上がらせているのではないか。
同時に、この物語は科学が発達した文明社会における人間存在の意味をも問うている。 AIが次々と人間に置き換わろうとしている世の中では、ヴォネガットの作品ではお馴染みのキルゴア・トラウトが語っている通り、人間が人間であるというだけで愛せる理由と方法を見つけられなければ、文字通り人間は抹殺されるだろう。
なお、日本語では訳されていないが、本書には「豚に真珠」という副題がある。これははたして社会の役立たずに金を分け与えるエリオットを指すのか、それとも肥え太る拝金主義者を揶揄しているのか。おそらく両方の意味を込めていると思われるが、それを考えさせるところに作者の意図が感じられる。

レビュー投稿日
2019年4月5日
読了日
2019年4月5日
本棚登録日
2013年9月16日
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yumickさん (2019年4月6日)

読みたいな

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