杏っ子 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1962年6月10日発売)
3.72
  • (13)
  • (20)
  • (24)
  • (3)
  • (0)
本棚登録 : 264
感想 : 23
4

文豪、室生犀星を初めて読む。
前半は氏自身のことを、後半は自身の娘である杏子のことを中心に書いている。軽井沢に疎開してきたところまでは淡々としており、作者の嫁とのエピソードも最小限だし(ほかの作品で描き切ったのか?)正直これと言って平坦で感情移入が出来ず、分厚い本を持て余す気分だったが、杏子が見合いを始めたあたりから急激に面白くなり一気に読めた。物語には悪者が必要なのかな、と感じる。杏子の夫は理屈の通らないひどい野郎だし、息子も職にも就かず嫁とは3か月で離婚、嫁のりえ子は病気になるしで散々ではある。息子の嫁探しのところで、バスで同席する人を探したりするところが可笑しい。
杏子との作者との掛け合いがとても楽しく、杏子が最後に家に戻ってくれるところで一応のハッピーエンドですね。
執筆を通じて母に会うことができ幸せと書いているが、自身の身に起こった不幸を作者に読んでもらう幸せもあるかと思う。ここまで赤裸々に書くのも恥ずかしいとは思うが。
こまやかな感情表現を美しい言葉で綴っており、読了後の充実感がよいです。
新聞の連載であったこの作品は読む気にさせるユニークな題名がついていて楽しく、小さな章で連続されているのも読みやすくて良いです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 純文学
感想投稿日 : 2022年1月10日
読了日 : 2022年1月10日
本棚登録日 : 2022年1月10日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする