農山村は消滅しない (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店 (2014年12月20日発売)
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感想 : 33
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増田元総務大臣が提出した「増田レポート」に対するアンサー本になっている。『地方消滅』も合わせて読むと、各々の識者がどんな立場にたっているのかよくわると思う。

著者は「増田レポートは、外観的かつマクロ的で若者を中心とした田園回帰というミクロの動きを捨象して地方論を論じており、論が粗い」と主張する。加えて、こういった地方消滅というセンセーショナルな論は、地道に活動している農山村の方々に対する喪失感につながる可能性があり、懸念されると主張している。

中身は、著者が調査してきた農山村の事例を中心に地方のミクロの動きを活写している。個人的にも、「地方」という1つ切り口だけで全体を話すのは非常に危ういと考えるので、今回の増田レポートは著者が言うように「安倍政権の地方創生施策を後押しする政治的役割が強い」という主張に同意する。

しかし、著者はまだまだ社会学者としての枠組みを抜け切れていないと言わざる得ない。じゃあどうすれば良いのか、地方、農山村、都市を含めた100年先の国家のビジョンをしっかりと示さないと本当の意味にでの増田レポートに対するアンサーにはなっていないだろう。細かい政策論は、行政マンがしっかりち考えるが、現場で頑張る方々が共有、共感できるビジョンをしっかりと提示できない限り、いくら「農山村は消滅しない」と言っても絵に描いた餅であろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年1月29日
読了日 : 2017年1月29日
本棚登録日 : 2017年1月29日

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