ゲームの王国 下 (ハヤカワ文庫JA)

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本棚登録 : 198
レビュー : 25
著者 :
Yoshi_Navyfieldさん 小川哲   読み終わった 

上巻のオビには、個人的ハズレなし国内作家部門の男女筆頭である、伊坂幸太郎さんと宮部みゆきさんの推薦文!
これは、僕の記憶が確かなら、あの「虐殺器官(伊藤計劃)」の文庫刊行時と同じ組み合わせです。期待が高まらないわけがない。

そんな思いで読み始めた上巻は、1950年代から60年代をささっと駆け抜け、主としてポル・ポトが率いるクメール・ルージュが支配し、不正と猜疑と虐殺が横行する1970年代のカンボジアを舞台に、終始憤りとやるせなさと苦しみが重たくのしかかるストーリーが展開されました。
本作のダブル主演ともいえる、人の嘘を見抜くことができる少女ソリヤ、並大抵の大人を凌駕する論理的で明晰な頭脳を持ち、極度に潔癖症でもある少年ムイタック(本名ではなく"水浴び"という意味の通り名)はじめ、主要な登場人物もこの上巻で揃います。
人民を幸せにするはずだった革命の理想を貫き、その失敗を認めたくがない故に失敗の本質を見ようとせず、革命の主導者たちが革命の同士や人民を犠牲にして血みどろのディストピアを現出させていく様は、読むのがしんどいのに読まずにはいられない異様な迫力と臨場感に溢れています。
奇妙な縁の巡り合わせで出会い、あるゲーム遊びを通じて互いへのリスペクトを抱いたソリヤとムイタックですが、出会ったその日に革命の影響で離れ離れになり、全く異なる数奇な人生を歩むこととなります。
そして上巻のラストには、大きな衝撃が待ち受けているのですが…

気が急いて、カバーをつけるのももどかしく下巻のページをめくると、いきなり舞台は2023年。何ですとーーーーー!?
「続きはどうなったの?、いや下巻は現代と回想形式の過去を行きつ戻りつの展開か?」とも考えましたが、それもしばしのこと、現代パートは現代パートで、70年代パートに勝るとも劣らぬ引き込まれ具合で一気に読み通しました。
ラストのとある登場人物の、神への祈りの独白には、身も心もグググッと震えました。決して甘くはないけど、これ以上はないであろう納得の終わりに、ページと一緒に目を閉じて深ーい余韻に浸りました。
エンドタイトルとしては、Simon&Garfunkelバージョンではなく、Gregorianバージョンの"Scarborough Fair"がふさわしいかな。

中世以前ならともかく、僕が生まれて間もない頃に同じアジアの中であった出来事やのに、この本を読むまで、ほとんどカンボジアの壮絶な悲劇を知らないままやったこと、ソリヤやムイタックに対して恥ずかしい。
そういった歴史以外にも、目まぐるしく、慌ただしくいろんなことを真剣に考えさせられる物語でした。

レビュー投稿日
2020年3月21日
読了日
2020年3月21日
本棚登録日
2020年2月13日
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