「隔離」という病い―近代日本の医療空間 (中公文庫)

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著者 :
yoshinarさん  未設定  読み終わった 

日本のハンセン病政策を振り返る一冊。大した根拠もなく、その時代で声の大きかった人に流されるかのようにして、恐ろしく、また恥ずべき政策が長年にわたり幅を利かせた裏側を検証している。ここで糾弾されるべきは、隔離医療を主張した光田健輔だけではない。それに便乗したり妄信したり、何も言わずにするがままにさせておいた誰もが背負うべきものだろう。読めば、光田健輔だって隔離を主張した裏側には、ユートピア的世界で患者たちが気兼ねなく暮らせるようにしたいという思いがあったようにも思えるし、事実、光田は並みの人ではできないくらい献身的にハンセン病患者と向き合いもした人なのだから。
そして、善意がまた、こういう悪しき政策を悪いものでないように見せてしまうこともまた危険だということを知った。『生きがいについて』の神谷美恵子や『小島の春』の小川正子、キリスト教系の奉仕団体など、よかれと思っていることはわかるが、それが本当に患者のため、世のためになったかというと……というところに疑問を提起している点はこの本の価値ある一点だと思う。もちろん、多くの人が神谷や小川の作品を賛美することで隔離医療を間接的に支持してしまったことも忘れてはならないこと。
とはいえ、患者たちのなかには、「隔離医療は是。なぜなら自分の周りにうつしたくない、迷惑かけたくないと思うだろうから」という声も少なくない。つまり当の被害者たちは意外と達観しているようなこともあるわけで、周りがとやかく言えるものではないこともある。結局どちらかの極に寄れるものではなく、このあたりのバランスのとり方、落としどころを慎重に、慎重に探ることが大事なのだと思う。
こういうことは日本のあらゆるところに巣食っているやり方。まさしく「くさいモノにはふたをしろ」なわけで、こんなことわざがまかり通っているところが日本の病いというわけだ。著者が言う通り、これをハンセン病の話としてだけ読んではいけない。思考することをやめ、主張する人に任せるがために恐ろしい世の中に向かいつつあること、大阪市で、あるいは福島とか現代だって限りなくある。

レビュー投稿日
2012年2月26日
読了日
2012年2月19日
本棚登録日
2012年2月20日
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