ガラスのうさぎ (フォア文庫 愛蔵版)

著者 :
  • 金の星社 (1994年1月1日発売)
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感想 : 4
5

小さい頃、わが家にも『ガラスのうさぎ』の単行本があった気がする。黄色い背景で防空頭巾をかぶった女の子が焦土に立っているような表紙が記憶にある。でもきょうのきょうまで読んだことがなかった、なぜだか。
この度ふと手に取って読んでみたんだけど、だいぶ思っていたのと違う内容だった。そもそも私は児童文学の創作ものだと思っていて、たぶん読んだことがなかったのもそういうのにありがちな教訓くささを敬遠してたんじゃないかと思う。
ところが、これって随筆(手記)じゃないか。しかも前述の表紙のイメージから東京大空襲に遭った話かと思いきや、確かに空襲で母や妹をなくしはするんだけど、本人は疎開先にいて実際には体験していない。つまり、大空襲が大変でしたって話じゃなくて、戦争中またその後1・2年までの3年分くらいの生活の様子が書かれているわけ。だから、よくもまあこんな窮乏状態に陥ってまでアメリカと戦争続けてたなとか、親子が離ればなれになって過ごさないといけない状況といった理不尽さ、それをしょうがないこと、当たり前のことと思いながら生きる子どもの姿に視界が霞んだ。
戦後も何やかやと事が起き、ノンフィクションなんだけどまるでフィクション。朝ドラのようですらある。血のつながりの何ともろいこと、ゆきずりとか偶然だけの出会いの人々の何と温かなこと。人生って何が起こるかわからないし、すべてとはいわないけど戦争だったからそうなったというようなことも多々あるのでは。それを「私」(著者)は「しっかりしなければ」と過ごしていく。子どもにそんなこと思わせないといけないって……。
戦争が終わり、女学校に通い友達と楽しく過ごすようにもなった「私」(著者)は、新憲法の誕生に際し、文中で第9条を引きながら戦争をしないと謳うその内容に過ぎた日々を思い、未来への希望を感じる。
私が子どもの頃ってこういうふうに戦争は二度としてはいけないという趣旨の子ども向けの本がいっぱいあったよね。『かわいそうなぞう』とか『ちいちゃんのかげおくり』とか『対馬丸』とか、『はだしのゲン』だってそういう系譜だろう。当時を体験した大人たちが、幼い頃、若い頃に体験した「生活」を二度と繰り返したくないという思いをそれぞれのお話に託したのだろう。日々の雑事にかまけて声高に叫んだりしてないけど、やっぱり私も戦争はしてはいけないって何となくのレベルでも思っているし、矛盾するようだけど絶対的なレベルでも思っている。
翻って戦争を知らない子どもたちが世のなかを牛耳るいまの世のなか、きな臭くないか。悲しいことだし恐ろしいこと。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年7月19日
読了日 : 2020年7月19日
本棚登録日 : 2020年7月19日

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