おいしいもののまわり

著者 :
  • グラフィック社 (2015年12月7日発売)
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感想 : 22
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土井善晴さんはメディアなどしばしば見かける料理界の有名人。話はそれるけど、料理研究家界も世襲が多いよね。特に女性料理研究家の息子が料理研究家を名乗ってることが多い感じがして、何だろうな……純粋に好きなのかもしれないけど、親の七光りでアクセスしやすいお手軽な道を選んじゃったんじゃないのかなと思わないでもない。
……と、うまい具合に話が戻ってきて、土井さんもそういう意味では父親からつながる料理人であり料理研究家なわけで、メディアによく出ていることもあってちょっとうがった見方をしていたかもしれない。この本を読んで、思っていたよりいい文章を書く人、真面目に料理に向き合ってきた・向き合っている人なんだなという印象をもった。
この本は食べものや料理周りのことを取り上げた32編の随筆が入っている。食物や料理に関する知識が入ることもさることながら、ゆったりとした気持ち、ていねいに生きることを誘う文章だと思う。そういう印象を込めて、エッセイというよりは「随筆」。
なかでも、たまたまこの本を取りパラっとめくって読んでみた、それによって全部読んでみようと思ったきっかけの「洗いものから、学んだこと」(p.74)が出色の出来だと思う。
「ただ道具を磨くために力を入れて手を動かすよりも「きれいにしよう」という気持ちで手を動かしたほうが、断然美しくなることに気がついた。それは当時の私にとっては大発見だった。 ~中略~ だけど、そのとき、だれからも教わらず、自分で気づけたことが大切で、教えられなかったことが良かったのだと思う。きちんと教えられて、要領よく身につくのとは意味が違う。」(p.75)というあたりとか、洗いものを楽しむということとか、「「器を割るな」と言っても器は割れるが、「音を立てないように洗って下さい」と言うと器は割れなくなるものだ。」(p.77)というあたりがいい。
いってみれば当たり前のことだけど、当たり前だからとわかっているつもりでいずに、あらためてこういうことを思うことが大切なんだと、最近経験した別のことからも思う。このことは食べものとか料理にもつながるもので、この本全編を通しても当たり前のことをていねいにやることが書かれているのだと思う。ご飯をジャーで保温したり季節はずれのものを食べたりという無理をしなくても、炊いてから時間のたったご飯をおいしく保ち、おいしく食べる方法はあるし、旬のものだけで食卓を整えることはできる。
「料理」といったり「調理」といったりするけど、どちらも「理」が入る。つまり料理・調理とはある種科学的なものであり、理にかなっていること、無理をしないことが大事であり、それがおいしく食べる当たり前の方法なのだということをあらためて教わった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年1月21日
読了日 : 2023年1月21日
本棚登録日 : 2023年1月21日

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