デビュー作の『燃える男』に比べて、巨匠最後の長編『トレイル・オブ・ティアズ』は、話の運びがスマートになっていた。
主人公の超凄腕外科医の人物紹介にしても、冒頭部分に簡潔にまとめられ、読みやすくそれでいて際だった個性が読者にわかるようになっている。
『燃える男』の時のように、我慢しながら読み進める必要がないのである。
追う者と追われる者の駆け引きや絶望的な状況からの脱出などのアクションに加え、遺伝子操作とクローンをめぐる黒い陰謀、夫の生存を信じてひたむきに行動する妻の愛などなど、読ませる要素満載。
ひとつだけ難を言えば、突然現れ突然去っていったチェロキーインディアンの集団が、重要な役割を担う割には謎めいていて、よくわからない。謎の集団でもまあ、いいんだけれどね。
題名にまでなっているほどなので、作者の思い入れもひとしおなはずで、なら、もうちょっと書き込んでもいいかなと思った。
(彼が、クィネルの他の作品に登場する人物で、そちらの作品の方で経歴なり活躍ぶりなりが詳しく記されているというのなら別だが。)
どちらか選べといわれたら、やはり老傭兵と少女の物語の方が私は好きだが、『トレイル・オブ・ティアズ』も文句なく面白かった。
読書状況:未設定
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2008年1月27日
- 本棚登録日 : 2008年1月27日
みんなの感想をみる