横溝正史読本 (角川文庫 よ 5-200)

制作 : 小林信彦 
  • 角川グループパブリッシング (2008年9月25日発売)
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本棚登録 : 122
感想 : 8
5

嬉しいねぇー。小林信彦による横溝正史ロングインタビューがようやく読めた! 長らく絶版だったし、古本は高額で取引されてたから、このたびの復刊は本当に嬉しい。一気に読んでしまった。

新青年の頃、「本陣」「蝶々」「獄門」の三冊、そしてクリスティーを巡る話題が大きな柱。乱歩、雨村、水谷準は勿論のこと、渥美清や果てはSFまで。博覧強記同士の話題はあっちこっちに飛びまくり、「これからは半村良をおおいに読むとしましょう」なんて横溝先生、やっぱりスーパーおじいちゃんだ。特に印象的だったのが「対談を前に読んでおかなくては」と生前の夢野久作から寄贈されていた「ドグラ・マグラ」を読んだ話。あまりにも本の内容が強烈だったせいで、書棚の大きなガラスを割っちゃったくだりは興味深かった。夢野と横溝、この二人の作家には殆ど接点がないと思っていただけに、双方のファンとしては嬉しいことこの上なかった。これも丁寧に話し込んだからこそ引き出せたエピソードで、貴重なインタビューだと思う。

惜しむらくは、文庫版で削除されてしまった乱歩没年の日記だ。権利の問題か? どういう経緯で削除されたのかはわからないが、読みたかったなぁ。また、最初の出版からかなり年月が経っているので、注釈がそろそろ必要ではないかと思った。もともと、わたしは探偵小説好きなので、このあたりの話題には結構ついていけたけれど、戦前の探偵作家の名前等は大部分が現在では忘れ去られている状況だ。21世紀に復刊したなら、やはり解説がほしいところ。資料価値の高い本なだけに、そのあたり手を入れる必要はあるかもしれない。いや、もしかしたら「完全版」という形で後年出るかもしれないね。って勘ぐり過ぎかしら。

いろいろ言ったけど、とにかく楽しい一冊だった。戦前の探偵小説ファンは勿論のこと、戦後の推理小説誕生に興味のある人なら必携の一冊だろう。

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感想投稿日 : 2008年10月4日
本棚登録日 : 2008年10月4日

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