堕落論 (集英社文庫)

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本棚登録 : 674
レビュー : 64
著者 :
youhei.sakaguchiさん  未設定  未設定

 何かに囚われてしまうということ、それを嬉々として受け入れて思考停止のまま踊っている人間、そういうものに対する嫌悪を本書からは強く感じる。終戦期に発表されるや一気に話題となったのは、読み手が戦時体制への批判を程よい羞恥心を伴って反芻できたからか。一方で、2009年に生きる自分の心にも安吾の言葉が響くのはなぜか。

 ここでいう堕落は、「いわゆる堕落」とは違う。制度や伝統や価値観、そういうものが生み出す茶番を示して、人間本来の姿への回帰を説く。その回帰が「堕落」と呼ばれるのなら、甘んじて堕落の道を行こうではないかと語りかけている。

  『生きよ堕ちよ、その正当な手順のほかに、真に人間を救い得る便利な近道がありうるだろうか』(本文抜粋)。人間存在を真摯に見つめていればこそ、かくも硬派な評論ができる。一見シニシズムに陥っているようだがそうではない。大きな愛に満ちているテクストだ。

レビュー投稿日
2009年5月18日
本棚登録日
2009年5月18日
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