思い邪なし 京セラ創業者稲盛和夫

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  • 毎日新聞出版 (2019年4月20日発売)
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その生い立ちから若手社員時代、京セラ創業、DDI創業、そしてJAL再生に至るまで、「新・経営の神様」稲盛和夫氏の半生を記した一冊。

「アメーバ経営」として有名な、小規模チームを事業単位としてリアルタイムでの数値の見える化により独立採算を促す徹底的に合理的な経営管理手法、その一方でJAL再生においても揺らぐことのなかった「全従業員の物心両面の幸福の追求」という情理の心、これらの根底にある「フィロソフィ」や「利他の精神」、そして「動機善なりや、私心なかりしか」と自らを律する克己心、人として正しいならばどこまでも追求する並外れた探究心、あらゆる権威を否定する反骨心があり、これらに呼応するかのように惹きつけられた多くの人々との出会いや別れ、確執、成功と失敗、修羅場の連続が語られる。

自身によるこれまでの著書からの引用や、本書の取材で初めて見つかった若手時代に父親に宛てた手紙などを通じて「人間・稲盛和夫」がその時何を思いどう行動したのかを追体験できる。また、今もその評価が完全に定まっているとは言い難いJAL再生についてもその内情を含めて詳細に記載されており、何より企業人として「ブレないフィロソフィ」を持つことの大切さ、一方でそれを持ち続けることがどれほど難しいことなのかを痛感する。「新・経営の神様」の集大成であると同時に、読者に人として「働くこと」の意味を今一度本気で考えることを促す一冊。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 自己啓発
感想投稿日 : 2019年8月11日
読了日 : 2019年8月10日
本棚登録日 : 2019年8月10日

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