不連続殺人事件 (新潮文庫)

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本棚登録 : 259
レビュー : 23
著者 :
イワトビペンギンさん 小説(ミステリー)   読み終わった 

たまさか図書館に置いてあるのを見つけて、すぐさま手に取った。だから私の読んだ角川文庫版では、今は巻末に収録されているという短篇などはなかった。
坂口安吾は探偵小説の神髄は「犯人当て」にあると言い切ったとおり、本作もいったい真犯人は誰か、ということが小説の主題である。物語の最後で、探偵の役どころである巨勢博士が犯人とその動機、そして八人もの殺人が行われた事件の全貌を語るのだが、その件を読むと、本作が「犯人当て」をモチーフとした探偵小説として実にフェアな書き方をしていることがわかる。その中に坂口安吾が潜ませた小さな違和感を捉えられるか? おそらく坂口安吾は相当に自信があったに違いない。ゆえに真犯人を当てた読者に懸賞金を出す、という企画も発表当時には行われたという。
本作は登場人物の多さが特徴的だ。さらに、登場人物の一人ひとりが、とにかく個性的で一癖も二癖もある。個性ある人たちが一堂に会した洋館で起こる殺人事件だけに、誰もが怪しく思えてくる。しかも登場する人物は三十人を超えるため、八人もの殺人が行われる事件ではあるものの、容疑者の数もまた少なくないのである。物語は語り手である矢代の視点で進んでゆくが、当然ながらこの語り手もまた「信頼できない語り手」に思えてくる。
読み始める前に、本作の「真犯人当て」の趣向を知ったために、なおさら疑心暗鬼になりながら読み進めてしまったかもしれない。ミステリー史に輝く名作とすでに名高い本作だが、読んでみて「名作」の冠も決して大げさではなかった。
本作においては、モルヒネやら青酸カリといった毒物による殺人も行われるが、この作品が書かれた昭和二十二年頃の日本では、これらの毒物は容易に入手可能だったのであろうか。そう思われるほどに、これらの毒薬がいわば「自然に」使われている。一部を除いて、それらの薬物の入手先も明かされない。事件の解決には入手先が決め手になることはないので、あえて話中でそれらを語っていないのかもしれない。しかし、そうした毒物が自然に登場する戦後間もない日本社会の「闇」も合わせて見たような気がする。

レビュー投稿日
2019年7月25日
読了日
2019年7月24日
本棚登録日
2019年4月22日
7
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