赤朽葉家の伝説 (創元推理文庫)

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本棚登録 : 2572
レビュー : 282
著者 :
イワトビペンギンさん 小説・物語   読み終わった 

桜庭氏の著作を読むのは、『少女七竈と七人の可愛そうな大人』以来で二作目となります。
最初に出会った桜庭さんの物語は、何とはなしに浮世離れした、幻想的な雰囲気をまとった作品という印象でした。そして、少しばかり官能的な要素も含まれていたように思います。
二作目であるこの物語は、あとがきによれば、著者いわく「全体小説」だそうです。つまりは、歴史小説でもあり、家族小説でもあり、恋愛小説でもあり、かつミステリーでもある。そういった趣の長編小説ということです。
読み終わって、振り返ってみると著者自身が評した「全体小説」とは、まさに言い得て妙でしょう。三代にわたる山陰のとある村に住む本家の大家族を描いた作品ですが、歴史小説としても読めますし、恋愛小説でもあります。どうにでも読めますが、一方でどの既定のジャンルに収めようとしてもそこから逸脱してしまう。そんな不思議な風合いの小説です。それゆえ、桜庭氏の最初に読んだ作品に感じた幻想的なエッセンスも再び味わうことができました。
長編小説でもあり、一つの作品で実の多くのエッセンスを味わわせてくれます。読み進めていく間にくるくると表情を変えながら、「全体」としては鳥取の村に大きな鉄工所を構える「赤朽葉家」の三代記という通底奏音に乗って、ゆるやかに、静かに物語は進行していきます。三代記ですが、物語の語り部は、三代目にあたる「なんでもない」娘です。この語り部の選択は絶妙と言えます。
そんなわけで、『赤朽葉家の伝説』という全体小説は、桜庭氏の代表作たり得る作品という世間の評判どおり、いつしか作品世界に引き込まれ、なにか上質なオーケストラでも聴いているかのような気持ちで読むことができました。本当に一冊で、何度もおいしい作品だと思います。
残念なことをひとつ。作品中とあとがきで、あきらかな誤植が二カ所ありました。作品の質を思えばわずかな瑕疵とも言えますが、画竜点睛を欠く気がして、その点だけがいささか残念です。

レビュー投稿日
2019年1月8日
読了日
2019年1月8日
本棚登録日
2018年11月2日
1
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