慟哭の海峡 (角川文庫)

  • KADOKAWA (2017年11月25日発売)
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感想 : 7
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戦時中、旧日本軍の輸送船が米軍の潜水艦に数多く沈められ、十万人以上の日本人が犠牲となったバシー海峡の存在を本書を読んで初めて知ることができた。
この魔の海峡で、中嶋秀次氏は十二日間も漂流した。漂流の描写は壮絶であった。
また、日本人にはお馴染みのヒーロー「アンパンマン」の生みの親である、やなせたかし氏には、戦時中バシー海峡で亡くなった千尋という弟がいたことも初めて知った。
千尋は幼いころは丸顔で、優しく、京帝大卒で海軍将校になり、前途有為にもかかわらず国のために犠牲になった。千尋は「アンパンマン」のモデルなのだろうと自分も思った。

本書は、埋もれていた歴史事実を教えてくれた。
当時の国家体制から自己犠牲を強いられ、無念の死を遂げた多くの若者のことを考えるきっかけとなった。
だからこそ、作者の「アンパンマンを通じて、自己犠牲という日本独特の価値観であり、生き方が、世界に広まっていくことを願わずにはいられない。」という件には、納得できないものを感じた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年10月17日
読了日 : 2021年10月17日
本棚登録日 : 2021年10月17日

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