ジャケットを見てシングルマザーの感動物語かと思ってしばらく遠慮していたのだが、3人は姉弟妹だった。いわゆるハートウォーミングなテイストの作品ではなく、ハードでシリアスな状況を描いた快作だった。
犯罪と貧困、田舎のファミリーの掟、というキーワードが内容に合っていると思うが、全体のトーンは静かで底辺には暖かいものが流れているのが判る。映像は終始、寒々としている。雪のない『ファーゴ』って感じ。
主人公は17歳の女子。覚醒剤絡みで逮捕された父が保釈金の担保に土地と家を抵当に入れていなくなったので、父を探さねばならい。ショックで母は口が利けなくなってしまっている。幼い弟と妹の面倒も見なくてはならない。父の行方を探っていくうちに親戚の妨害に合う。
登場人物が完全に冷酷ではない、ある種の多面性を見せるところにリアリティを感じる。
髪をつかんで「これ以上探るな」と言った伯父さんが、あとから「俺の家族だ」と迎えに来てくれたり、「結婚すれば判る」と旦那の車を借りてくれなかった親友もあとで助けに来てくれる。主人公からして負けん気が強いが、いざ脅されるとびくびくする。かと思えば殺したければ殺せと言ったりする。
ファミリーが主人公をリンチにする時も男は手を出してなかったり、冷たい世界でぎりぎり優しく生きてる。
弟と妹がすこぶるかわいい。弟は優しいし妹はいつも笑顔だ。
主人公リー役のジェニファー・ローレンスのほっぺが少しふっくらしているので、見た目で苦労してる感じがしないのが残念。でも役者としてはピカイチかも。
デブラ・グラニク監督のほかの作品も観てみたいが日本では今作しかリリースがないようで残念。
あとリスを捌くシーンがあるのでリス好きは遠慮したほうがいいかもしれない。でもそれは猟奇的なシーンではなく、あくまで生活の一部だ。
- 感想投稿日 : 2015年2月17日
- 読了日 : 2015年2月17日
- 本棚登録日 : 2015年2月17日
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