医学生命科学における再現性の問題について、現場レベルの要因から研究者コミュニティの置かれた構造的要因まで幅広く分析した本。
膨大なインタビューや文献調査に基づき、再現性のなさの原因だけでなく、再現性を向上させるための多様な施策についても紹介している。
「だから医学・生命科学はダメ」という内容ではなく、きちんと研究を人類の未来につなげるための可能性を高めるための本。

2024年3月17日

読書状況 読み終わった [2024年3月17日]
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読書状況 読み終わった [2024年3月2日]
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主人公が檻の外に出る物語。あるいは、虎になりそこねた李徴の話。

自我をとろけさせる心地よい相手もずっと存在するわけではない。自分を呪うわかりやすいトラウマがあるわけではない。不倶戴天のわかりやすい敵もいない。自分を不愉快にさせる相手や知らない大勢の悪意も自分を縛るものではない。頭の中で目まぐるしく移る思考を、身体はどう思うか。

空想の安全地帯を何度もループし、主人公は結論に達する。自分は自分というだけで王冠を戴き、誇りをもてばよい。安全地帯を出て無様にもがけばよい。

2024年2月16日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2024年2月16日]
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[個々人の考え]
・関係性の質→思考の質→行動の質→結果の質
・論理的思考とシステム思考
・自己強化型ループ、バランス型ループ、遅れ
・メンタルモデルと推論のはしご(現実にある数々の事実→認識した事実(状況)→状況の解釈→推論の前提→結論→新年・世界観→行動)
・ダブルループ学習:シングルループ(現実の状況→情報フィードバック→行動)、情報フィードバック⇆メンタルモデル→方針・戦略→行動
・マイクロマネジメントによる副作用、外部介入者への依存
・対処療法と根治療法

[チーム学習]
・基盤となる事実:ログなど
・探求の質と主張の質(仮説化)
・信奉理論・使用理論
・チームの対話:レベル1=儀礼的な会話、メンタルモデルを保留してレベル2=討論、視座を転換(相手の立場になって)してレベル3=内省的な対話、ビジョン・目標か信念・規範のどちらかくを手放してレベル4=生成的な対話

[チーム学習の発展]
・自己マスタリー
・創造的緊張と感情的緊張
・共有ビジョンに対する姿勢の7段階:コミットメント、参画、心からの追従、形だけの追従、嫌々ながらの追従、反抗、無関心
・補完原則:リーダーは下ができない分野で機能して補完する
・戦略の構造:基本理念(経営理念)、理論・ツール・手法、学習インフラにおけるイノベーション

2024年2月12日

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言葉の使い方を巡るSF。
意味を共有できない「言葉」をやり取りするためには考え続けるかルールで縛るしかない。

2024年2月7日

読書状況 読み終わった [2024年2月7日]
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知識の記述におけるボトルネック(暗黙知、枚挙の困難性、記述の解像度など)を、教師あり学習では正解例の提示で解決し、言語モデルでは組み合わせ的創造性で(おそらく)解決している。

ChatGPTの実現には、学習の面とモデル構造の面でブレイクするーがあった。学習の面では、(1) 自己教師あり学習(ラフに言うと穴埋め問題)による教師データを膨大に増やしたこと、加えて、InstructGPTにおいて、(2) 教師ありファインチューニングすなわちプロンプトと回答の正解例による学習)と、(3) RLHF (Reinforcement Learning From Human Feedback)すなわち人間による評価に基づいて強化学習で報酬モデルを学習し、その報酬モデルを回答の好ましさの評価に用いたことが、重要であった。また、モデル構造の面では、注意機構(入力内の予想間の関係を計算して注目すべき情報を重み付けする)を備えるトランスフォーマーが重要であった。

言語生成については言語モデル、画像生成については拡散モデルが支配的。

スケーリング則と能力創発。

少数例プロンプト、CoTプロンプト。


研究プロセスの自動化:課題策定、研究実行、成果発表のフェーズごとに、生成AIの読解・執筆・アイデア生成の機能を利用。

Computational creativity:組み合わせ的創造性、探索的創造性、革新的創造性。

画像や音楽に対して、プロンプトという言葉で制御できる範囲が限定的。ControlNetのような、細かい特徴をお好みで制御することを容易にする技術は他の分野でも発展しそう。

2024年2月3日

読書状況 読み終わった [2024年2月3日]
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3418人の戦死者を調べ上げる圧巻の仕事。

2023年8月30日

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読書状況 読み終わった [2023年12月25日]
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情報Ⅰの副読本として適している。
特に、経営や経済との関連については興味深く読めた。

2023年12月18日

読書状況 読み終わった [2023年12月18日]
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読書状況 読み終わった [2023年12月2日]
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文体や心理描写が研ぎ澄まされていた。

2023年11月3日

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多くの子が統合失調症を発症した家族のオーラルヒストリーと、統合失調症を巡る科学史・医療史を織り合わせた稀有な本だと思う。
家族史を記述する中で、疾患の壮絶さとともに、医療や福祉におけるアンメットニーズや患者家族の辛さを深く分析している。特に、虐待やヤングケアなどの言葉でひとくくりにはできないが、サバイバーという視点が家族が自分たちを捉え直す際のキーワードになっている。また、学問の潮流や金銭によってアクセスできる治療が異なることも冷たく突きつけられる。
科学史では、精神医学・遺伝学・生化学・神経科学などにまたがり、統合失調症が学問的にどう捉えられてきて、それが治療法へどう反映されたか(あるいは反映されなかったか)がスピード感をもって描かれる。特に遺伝学や神経科学で貢献した、リン・デリシやロバート・フリードマンが製薬会社の壁に阻まれた点は興味深い。
家族史と科学史が家系遺伝学で結びつくのは物語として面白い。同時に、他の様々な疾患の研究の文脈において、患者や家族が抱えている多様な苦しみが語られないままになっていることにこの本で初めて気づかされた。哲学や精神医学で論争があっても患者の状態がよくならないという冷めたコントラストがある。
ラストは、患者や家族の人生も科学の発展も少しずつ良くなることを感じさせる終わり方だった。

2023年10月15日

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はこだて未来大における計算論的思考(Computational thinking)をテーマにしたシンポの内容を再編成したもの。

個人的には
現実世界の問題の定式化・求解・解釈という軸と、
PBLのような現実世界とのつながりの中で学習をどうデザインするかという軸が、
複数の章をまたいで直交している感じだった。


# 第2章
・計算論的思考はプログラミング的思考との異なり、(Computerのように考えるのではなく)Computer scientistのように考えることを目標にしている。
・良い計算のためには、(1) 現実世界の問題を適切に表現する、(2) 記号の世界に持ち込まれた現象や問題について、より効率的・効果的な解法を探索する、という事が必要である。
・情報学は情報を操作し(操作的)、新たな情報を生み出す(構成的)。
・問題の難しさや計算の限界を理解することも計算論的思考の範疇である。
・プログラミングは、アルゴリズムを考えるデザイン・設計の部分と特定のプログラミング言語で実装するコーディングの部分から構成される。
・計算論的思考はハードウェア・物理的制約を考えることも含まれる。

# 第3章
・computeは四則演算より広い「計算」を含む。
・コンピュータと互いに補完し合う方法を教えるべきである。現在はコンピュータが得意な仕事を教えてコンピュータと競争するように強制している。
・学生が学習の積極的な生産者でいられるような構成論的環境の推進が必要である。例えば、協調的な学習シナリオが挙げられる。
・分野を超えた計算論的思考のためには、宣言的知識(学習者が知っていること)を特定の方法や状況で使う(手続き的知識)ことで、それがメタ認知的知識に転移させることが大切である。様々な科目においてそれぞれ、計算論的思考の学習シナリオを設定できる。そのためには、タスク構造、教育学、教師、学習者についての知識・気づきが必要である。
・教師からのフィードバックは、生徒がタスクの完了に向けて取り組んでいる状況下でのみ意味がある。
・学習者は自分の学習目的に合うようにタスクを修正したり、よりよい解決策を具体化することが本質的な役割である。

# 第4章
・抽象化:パラメータを選び出したり、要約した新たなパラメータを設計すること。
・モデル化:数理モデル、数値計算モデル、具象モデル
・モデルは、現実世界の対象をある観点から理解・説明・予測するためにある。
・モデルには構造と操作が含まれる。構造と操作を現実世界の要素や変化と対応付けることを「解釈」と呼ぶ。
・仮想化:現実世界と(機能としての本質が同じように)実質的に同じような状況をモデルとして再現する。仮想メモリ、仮想マシン、SaaS、音楽配信、ギグエコノミー、MaaS、3Dプリンタなど。
・コンピュータサイエンスは他の分野と直交している。

# 第5章
・マーの計算理論:計算理論のレベル(解くべき問題の記述、何を計算するのか、なぜその計算が適切なのか)、アルゴリズムのレベル(記述した問題をどのように解くかの方法の記述)、実装のレベル(プログラムとハードウェアで物理的に実現する)
・機能をどのよう実現するか(how)を考える前に、情報処理システム自体の what と why を明確にすることが大切である。

# 第6章
・身体性も大事
・初心者と熟達者で何が違うのか観察することから始める。
・メタ知識(教わったことそのままより汎用性の高い知識)を得るためには、共通性、類似性、パターン、モジュール化が肝である。
・現実世界との関わりの中で、予見、行動、省察を通じて学習を行うことが大事。
・対話から知識を生み出していく過程でコンピテ...

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2023年8月12日

読書状況 読み終わった [2023年8月12日]
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オーラルヒストリーを網羅的に収集した圧巻の仕事。

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やなせたかし氏が、アンパンマンという代表作を生み出すまでに、様々な業界の人々とともに、多彩な仕事を成してきたことがわかる。
その一方で、人生の後半までなかなか代表作が出なかったことを気にかける人間的な一面もある。
アンパンマンが幼児向けになったことを口惜しく思っているような節があるのは驚いた。

2023年7月10日

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2011年に刊行された、グリア細胞の重要性を科学的知見からまとめた本。
グリア細胞は、アストロサイト、オリゴデンドロサイト、マイクログリアから成る(また、NG2細胞もある)。ニューロンとの相互作用や遺伝子発現も含め、調べるべきことは多そうである。

2023年6月11日

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理想に向かってそれぞれの立場ですべきことをやり続けた人達の物語。

2023年5月23日

読書状況 読み終わった [2023年5月23日]
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すぐに答えを出さず、曖昧なまま向き合い続ける能力がネガティブ・ケイパビリティ。すぐに答えを出すポジティブ・ケイパビリティとは対極にある。著者はこの能力を、芸術のみならず精神医療や教育においても必要だと主張する。

結論をすぐには出さず棚上げできる能力は、人間相手だと共感能力につながる。また、問題に対する深い理解に到達できるとしている。逆に、ネガティブケイパビリティの欠如のもたらすデメリットとして、共感の欠如とともに、マニュアルへの過度なあてはめや、問題設定の現実からの乖離(簡単に解ける問題への落とし込み)、問題の深い理解への未達を著者は挙げる。

ネガティブケイパビリティが精神医学の現場で結果的に治療につながりうるメカニズムは何か。著者はその仕組みとして、時間が解決する「日薬」と見守られてるということ自体の効能を表す「目薬」を挙げる。さらに、プラセボや祈祷師の効能についても紹介する。

2023年5月6日

読書状況 読み終わった [2023年5月6日]
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本書は、ヘテロセクシズムが歴史的にどのように構成されたかの分析を行う。その中で、江戸時代の男色にまつわる文学作品、明治時代の学生男色、大正時代の新しい家庭像や、恋愛=結婚=家庭という捉え方、女性の専業主婦化、性科学による同性愛概念の普及、ボーイズラブなどを取り上げ、現代日本に存在するヘテロセクシズムを歴史的産物として捉え直す。

ヘテロセクシズムでは異性愛が当然視される。その帰結として、同性愛は排除される。さらに、男性の優位性、特に、男性による公的領域の独占は女性の公的領域からの排除につながる。結果として、男性同性愛排除と女性排除が「男の絆」を守ることに貢献するという構図になる。

タイトルは、サブカル論だと思ったが、実際は社会における捉えられ方を分析する。そのために、同性愛者や男の絆・同性愛にまつわる法律やジャーナリズム、文学作品やその受容のされ方をさまざまな資料から紐解いていく。

著者は意図的に、主流ではないことを分析するのではなく、そもそもの当然視されているヘテロセクシズムの側の 分析を行ない、それを通じて非主流の分析をも行なっている。その意図は成功していると思う。

本書では扱われていないが、女性同性愛そのものやそれを扱う文学作品の捉えられ方の分析を本書の内容につなげられるとより面白いと思った。たとえば、「といちはいち」の歴史などが考えられる。

2023年5月4日

読書状況 読み終わった [2023年5月4日]
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知的誠実さが極めて高い論証を読みたい人におすすめ。

ヒストリシズムや本質主義、自然主義に依拠するあらゆる言説を批判するとともに、プラトンが全体主義と酷似した政治理論を提示したことを論証する。
対して、個人の権利や自由を保証するために国家が必要であるとする「保護主義」を擁護するとともに、保護主義がプラトンに遡って不当に批判されてきたことを示す(不当な批判としては、個人主義と全体主義、利己主義と人道主義の関係を整理し、それぞれの組み合わせが可能であるにもかかわらず個人主義と利己主義を同一視して人道主義の義憤を促すといったものがあった)。

カントについて触れた、自然科学の人間中心的な説明も面白く読める。

2023年4月23日

読書状況 読み終わった [2023年4月23日]
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