戦後史の解放II 自主独立とは何か 後編: 冷戦開始から講和条約まで (新潮選書)

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レビュー : 9
著者 :
yujiohtaさん  未設定  読み終わった 

卒論へ向けて。
以下、本書より。

日本は幸運であった。日本は第一次世界大戦後のドイツのように、「恥辱的な和平」を強制されることはなかった。また、「戦争犯罪という嘘」に対する怒りが、多数の国民の間で爆発することもなかった。さらに、日本は第二次世界大戦後のドイツのように分割占領されることもなかった。あるいは、天文学的な数字の賠償金が科され、日本経済が破綻するようなこともなかった。
これらは何よりも、冷戦という環境下においてアメリカ政府が、勢力均衡の観点からも日本が大国としての国力を回復することを期待して、友好国としての同盟関係の形成と維持を求めていたからである。苛酷な国際政治の歴史を知る吉田(茂)から見れば、この対日講和条約は、「過去の平和条約に比べて比類なく公正で、かつ寛大」であったのだ。そのような歴史的な視座を持たず、また敗戦国であるという現実を直視せずに、あたかも日本が戦勝国であるかのように、何もかも自由自在に選択し決定できると夢想することは、あまりにも非現実的と言わざるをえない。
アメリカを中心として作成された講和条約を、それがアメリカの正義を押しつけるものであって、アメリカの利益に基づくものであると批判するのはたやすい。だが、国際政治の基調が、各国が国益を追求する中で、その国の国力が反映されるものであることは、国際政治学の教科書でわれわれが教わる基本でもある。われわれが考慮しなくてはならないのは、歴史上のそのほかの講和条約と比較したときのサンフランシスコ講和条約の特徴であり、歴史上のそのほかの占領と比較したときのアメリカによる対日占領への評価である。われわれは、より広い視野から、より長い時間軸の中で、戦後の日本の歩みを振り返ることが重要であろう。

レビュー投稿日
2018年8月4日
読了日
2018年8月4日
本棚登録日
2018年8月4日
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