(001)憧 (百年文庫)

  • ポプラ社 (2010年10月12日発売)
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本棚登録 : 330
感想 : 55

漢字一字のイメージで名作短編を収録したアンソロジーの第一弾は「憧」。
いきなり難易度高めなお題選んだなあ…。収録された作家は全員早逝している(三名中二名は自死)からか、ひりつくような若い感性が痛々しくも鮮やかです。
以下、三作品の超簡易感想。

太宰治「女生徒」
少女と女の隙間にいる女学生の一日を、女学生一人称で描いた作品。色々なものを嫌悪する幼い潔癖さを持ちながらそんな自分を恥じ、成長していく身体に戸惑う思春期の少女らしさがよく出ています。
自意識のお化けに振り回されるのは何時の時代の少年少女も同じなんだなあ。なんだか愛らしい一編でした。

ラディゲ「ドニイズ」
ある青年の恋物語。色々めんどくさい男だな!!と言いたくなる主人公にイライラしながら読み進めました。お気に入りの子が処女だと気分乗らないから、その辺の牧童に金払って抱かせるってどんな展開だ。
恋する男のダメさと可愛らしさ、その両方が描かれている短編でした。オチの少し滑稽な感じも良かったです。

久坂葉子「幾度目かの最期」
23歳で死を選んだ作家の、小母へと当てた最後の手紙。
若いとはいえ、ここまで恋愛にウェイトを置いているとそりゃ生きにくいだろうなあ。これだけ読むと少し(?)メンヘラっぽい恋愛脳な方にしか見えませんが、それが創作のエネルギーに繋がっていたのかな。
読み終えたあと巻末の「人と作品」を見て、ああこの人は綺麗な雪を見ずに逝ったのかとなんだか切なくなりました。

全百冊?というすごい数量ですが、短編は好きだし字が大きめでさくっと読めるので、ゆっくりとシリーズを読み進めようと思います。
漢字一文字のイメージで百冊というコンセプトには、厨二と乙女の悪魔合体的な魔力を感じざるを得ない…!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 文芸全般
感想投稿日 : 2011年10月7日
読了日 : 2011年10月7日
本棚登録日 : 2011年10月7日

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