作者の労力には本当に頭が下がる思いだが、このアイデアありきの本の作り方は物語の本質を見誤っているのではとも感じた。

2024年11月13日

読書状況 読み終わった [2024年11月13日]
カテゴリ 青春

すごかった…!
個人的に宮部さんの傑作第1位だった『模倣犯』を超えました。
第1巻のはじまりから、2巻の情報収集、そして3巻の裁判ですべてが収束していくさまの見事さ。まさにこれ以上ないほど素晴らしい「序破急」でした。
そしてストーリー構成もさることながら、人間描写の鋭さにも息をのみます。今作には中学生を中心に、その親や先生など様々な年齢・性格の人間が登場しますが、皆まるでそこで本当に生きているかのようです。その描写の容赦のなさ、しかし時折感じる人間へのまなざしの温かさ、この方はまだ文章が上手くなるのか…と驚嘆せずにはいられません。
辞書のような分厚さ×3冊もある本ですが、最後の方はこの中学生たちに会えなくなるのが寂しくて、終わらないで…と願いながらもページを繰る手が止められませんでした。読後のあのなんとも言えない爽やかさと寂しさは誰にも一度味わっていただきたいです。本当にすごい作品でした。

2016年7月24日

読書状況 読み終わった [2016年7月24日]

瀬戸内にある鳥坏島で行われるという、とある秘儀を取材しにきた刀城言耶。しかしその儀式は、十八年前、一人の生存者以外すべての参加者が行方不明となったという曰くのあるものだった。いったい十八年に何が起こったのか、そして今回の儀式は無事に終わるのか――。刀城言耶シリーズ。
相変わらずあふれ出る民俗学のかおり!素敵です。「鳥」や「海」に関する怪異・薀蓄も面白く読みました。
ミステリとしては、今回は「どうやって儀式中に人間が消えたのか」という謎の一本に絞られており、シリーズ他作と比べるとややボリュームの物足りない感じがあります。ただ真相が衝撃的で、民俗学の薀蓄との相乗効果もあり、インパクトの強い読後感でした。私には絶対に無理だなと思いました(笑)

2014年6月19日

読書状況 読み終わった [2014年6月19日]

著名な彫刻家である川島伊作が病死した。しかし直後、氏の娘をモデルにした石膏像の首が切り取られ、持ち去られてしまう。そしてさらに事件は起こる。なぜ首は持ち去られたのか、その真実とは――。このミステリーがすごい!2005年第一位。
石膏像をめぐる美術関係の薀蓄は勉強になって面白かったです。最終的に生首の謎もそこにつながってくるのも良かった。ただ、事件のあらましが非常に俗っぽい印象で、せっかく細やかに描かれている特異で美しい美術の世界までもが陳腐になってしまったように感じました。できることなら、事件を起こした狂気ですらも美術的であってほしかったと思うのは、わがままかもしれませんが…。
ミステリとしては、探偵役が見聞きした膨大な情報が最後にすべてつながる様は見事で、とても精緻な作品です。

2014年5月28日

読書状況 読み終わった [2014年5月28日]

「みおつくし料理帖」シリーズ6巻。
大きな決断を迫られる巻だった。それも一つではない。けれど、苦しみ考え抜いた先の澪の答えは、どこまでも澪らしかったと思います。
しかし、このまるで連ドラのような山あり谷ありは飽きない反面、読む方も振り回されて大変心臓に悪いです(笑)まだ先は見えませんが、どうかそれぞれにとって幸せな結末になりますよう…なんてフィクションと分かっていてもそう願ってしまいます。

2014年5月14日

読書状況 読み終わった [2014年5月14日]
カテゴリ 時代物

「みおつくし料理帖」シリーズ5巻。

2014年5月14日

読書状況 読み終わった [2014年5月14日]
カテゴリ 時代物

「みおつくし料理帖」シリーズ4巻。

2014年5月14日

読書状況 読み終わった [2014年5月14日]
カテゴリ 時代物

「みおつくし料理帖」シリーズ3巻。
暑気払いの料理の献立に悩む澪。そんなある日、坂村堂が雇い入れている料理人と顔を合わすこととなるが、なんとそれは、かつて天満一兆庵の若旦那と共に働いていた富三だった――。
どんなに辛いことが続いても歯を食いしばって前に進み続ける澪達を見ていると、本当に勇気づけられます。苦しくても、食べに来てくれるお客さんのために――と作られる料理は苦労の結晶のようで、作中で輝いています。菊花雪…まさに神々しいまでに美味しいに違いありません。
そして小松原の「駒繋ぎ」の台詞には、思わずもらい泣きしてしまいました(笑)

2014年5月13日

読書状況 読み終わった [2014年5月13日]
カテゴリ 時代物

「みおつくし料理帖」シリーズ2巻。
火事から立ち直り、元飯田町の新しい「つる屋」で腕を振るう澪。登龍楼との因縁も決着したかに見えたが――。
登場人物が増え、彩り豊かになった2巻目。故郷から遠く離れた地で澪の人の輪が広がってゆくのが自分のことのように嬉しく、恋に友情に、心に沁みる「人情」が涙腺を緩ませます。
そして相変わらずお料理が素晴らしく美味しそうで…雪ノ下の天ぷら、ほろにが蕗ご飯…食べたいです。「忍び瓜」はまさに澪の心情が忍ばれて切なく、名前も素敵でした。みな報われたら良いなぁ…。

2014年5月13日

読書状況 読み終わった [2014年5月13日]
カテゴリ 時代物

天涯孤独の澪はわけあって故郷大阪を離れ、神田御台所町の「つる家」で料理人をしていた。「つる家」の店主種市、ご寮さんのお芳、そして長屋の人々。温かい人々に囲まれながらも、澪は「雲外蒼天」の過酷な運命に飲み込まれていく――。
面白かった。とにかく出てくる料理の美味しそうなこと!とろとろ茶碗蒸し、ほっこり酒粕汁…巻末付録のレシピは、読者が食べたくてたまらなくなるだろうと予測してのことでしょうか(笑)旬を大切にする江戸の文化も、便利さに鈍感になった自分にはとても風流で新鮮にうつりました。
また、健気で努力家な主人公をはじめとして、登場人物達もとても魅力的です。美人で凜とした女将さん、訳ありげな浪人、幻の花魁…王道だけれどそこが良い。みな辛い事情を抱えながらも、支え合って生きている様が料理とともに心に沁みとおり、まさに人情、これぞ時代物の醍醐味です。

2014年3月21日

読書状況 読み終わった [2014年3月21日]
カテゴリ 時代物

いまだ解剖学への偏見が根強い18世紀ロンドン。外科医ダニエルの解剖教室から、身元不明の四肢切断死体が発見された。そしてさらに増える異形の死体。犯人は、その目的とは――?
とても面白かった!ロンドンを覆う黒く煤けた空気と、稀覯本、盲目の老紳士、解剖、”薔薇亭”、といった蠱惑的なキーワードが混ざり合い、くすんだ果実の腐敗臭とも言うべき独特の雰囲気を醸し出していて素敵です。作者の厚い美学を感じます。
登場人物達も皆個性的で愛嬌があり、犯人の可能性があってもなんだか好きになってしまうんですよねぇ。
ミステリーにも驚かされ、とても楽しめました。伏線が巧みで見抜けなかった…。
退廃的な雰囲気からのラストがまたなんとも切なく爽やかで、最後までとても美しく完成された作品でした。

2014年2月26日

読書状況 読み終わった [2014年2月26日]

字のない絵本。少女が魔法のマーカーを手にしたとき、不思議な世界への扉が開きます――。
とにかく絵が魅力的です!水路が張り巡らされた城下町、からくり細工のような空飛ぶ船、夕日に照らされるアラビアンナイトの街…すこし大きめサイズのページいっぱいに広がる世界にすいこまれます。冒険的なストーリーと美しい絵に、ページをめくるたびわくわくしました。

2014年2月15日

読書状況 読み終わった [2014年2月15日]
カテゴリ 絵本

住人全員が良い人だと評判だが、実は差配も店子も凄腕の裏稼業持ちである「善人長屋」。近頃、天誅を気取った謎の集団「閻魔組」が、裏稼業の頭目たちを次々と襲い話題となっていた。他人ごとではない「善人長屋」の面々も探索に乗り出すが――。
善人長屋シリーズ第2弾。前作は短編で、「善人」の評判と「悪党」の実態の落差でくすりとさせる、ほのぼの人情ものという印象だった。今作は長編で、全編にわたってシリアスな雰囲気でした。裏の技を駆使した閻魔組との戦いからも、お縫ちゃんの恋の行方からも、目が離せません。
読み終わって、善と悪との割り切れなさを前作より強く感じました。

2014年1月11日

読書状況 読み終わった [2014年1月11日]
カテゴリ 時代物

ある日、日本では父の急死にとまどう大学院生がいた。イラクでは、息子の病状に心を痛める傭兵がいた。そして、ホワイトハウスでは「人類滅亡の危機」の可能性が報告されていた――。すべてが繋がった時、人類は何を見るのか。
恐ろしかったが、面白かった。スケールの大きな物語によって浮き彫りにされるのは、人間の醜悪さです。知識不足で判別できませんが、多少の脚色はあるにせよ、おそらくこの小説に描かれているあらゆる形の”ジェノサイド”は本当に起こっていることなのだと思います。それを命令・実行しているのは全て人間なのであり、どこの国にあっても、人間とはこうも等しく醜いものなのかと考えさせられました。そして、世界で”ジェノサイド”が行われている一方で、その現状を描写している本作をエンターテイメントとして「面白い」と楽しむ私達読者がおり、その落差を自覚した時にめまいがします。
ただ、ラストはそんな我らにもまだ可能性はあるのかもしれない、と思わせてくれる締めくくりでした。
なんというか、滅亡とかそんなすごい話じゃなくても、他人を思いやってお互い助け合っていけたら少しは平和になるんじゃないかなと思います。

2014年1月11日

読書状況 読み終わった [2014年1月11日]

中学3年の泉水子は、世界遺産・熊野古道に建つ神社の一人娘。これまで家と学校を往復する生活だったが、ある日、犬猿の仲の幼馴染・深行とともに東京の高校への進学を勧められる。それは彼女が受け継ぐ血筋に理由があり――。
さすが荻原さん、世界観や描写あたりは本格ファンタジーといった様子ですが、キャラクター設定や物語展開はまさに少女小説。ヒーロー役がイケメンでオールマイティでツンデレなんて、あまりの桃色さに動揺してしまいました(笑)冴えない女の子がファンタジーな要素で実は…というのも王道ですね。
第一巻はキャラクター紹介と、これから始まる本章のための布石という印象で、これからの展開が気になります。泉水子ちゃんが引っ込み思案な性格から大きく成長しそうで楽しみです。

2013年8月1日

読書状況 読み終わった [2013年8月1日]
カテゴリ ファンタジー

忌み山でひっそりと暮らしていた一家が忽然と姿を消した。そして、村では惨劇が始まる――これは村に残存する「六地蔵様」に見立てた連続殺人なのか?ではなぜ…?刀城言耶シリーズ第4弾。

「忌み山」や山村の風習「成人参り」など、相変わらず民俗学的な雰囲気満載で堪能できました。また、ホラーとミステリーの融合もやはり見事で、冒頭の「禁忌の地体験談」には震え上がりました。
ただ、謎解きの部分は少々肩透かしを食らった印象でした。特に犯人の動機はこれだけの狂気と釣り合うのか…前巻にかなり驚かされたので、その分期待しすぎてしまったかもしれません。しかし、この独特の雰囲気、それでも緻密なミステリー、三津田さんさすがです!

2013年9月5日

読書状況 読み終わった [2013年9月5日]

ジャーナリストのミカエルは、とある大企業の前会長から依頼を受ける。40年ほど前、孫娘が孤島から失踪した事件を調べてほしいという。一族が集結したというその日、島はいわば”密室”であり、抜け出すことは不可能だった。はたして孫娘は生きているのか、そしてその日、いったい何が起こったのか――。
ふとした発見からだんだんと真相をつかんでいく展開や、いかにもいわくありげな一族の人間達、そのあたりは面白く読みました。点が線でつながり、当初からは想像できなかった大きな事件が明るみに出てくるのはミステリの醍醐味ですよね。
ただ、お国が違うからなのか、キャラクターが濃すぎて私には合いませんでした(笑)ミカエルがなぜそんなにモテるのか、なぜそんなに女性関係にフランクなのか理解に苦しむし、頭の切れるリスベットには負の魅力を感じるけども、尖りすぎていて好きになりきれませんでした。例の救出場面は良くやったと喝采を送りましたが(笑)

2013年6月28日

読書状況 読み終わった [2013年6月28日]

世界中の奇跡の真偽を調査する「バチカン奇跡調査官」。とある寄宿学校で起きたという奇跡を調査しはじめた平賀とロベルトだが、奇怪な連続殺人が発生、次々と関係者が殺されていく。殺人犯が潜む学園で、2人は真相をつかむことができるのか――。
まさにオカルト!ここまで話が広がるのか!と、序盤からは想像できないほどスケールが大きくなっていくのが面白かった。
平賀たちの視点と生徒の視点が切り替わりつつ、奇跡の真偽調査と殺人事件の調査が絡み合って進行していくので、ホラーというよりはミステリーに近い感覚で読みました。

2013年4月17日

読書状況 読み終わった [2013年4月17日]

老後のアレやコレやを笑い飛ばす、珠玉のシルバー川柳88首。
まず表紙の「誕生日 ローソク吹いて 立ちくらみ」に全部持っていかれました!(笑)ベテランの方々の、懐の深い喜怒哀楽が心にしみます(ときおりふき出します)。88首というのも「もうちょっと読みたい!」と思えてちょうどいい。ユーモアが大好きな祖母に贈りたくなりました。

2013年2月28日

読書状況 読み終わった [2013年2月28日]

伊織は少年ながら宮本武蔵の弟子である。ある日、亡き母を蘇らせようとするが失敗し、巻き込まれた弟が白狐となってしまう。弟を人間に戻すため、兄弟は本物の外法使いを探し歩くが――。
外法を使う淀殿やオネエの真田幸村、よみがえる織田信長など、わりとなんでもありな時代小説(ファンタジー?)。設定は漫画『鋼の錬金術師』のオマージュっぽいですが、本作はもう少しライトな作風でした。戦国時代あたりの有名歴史人物オールスター大衆スペクタクル時代小説とでも形容したくなるような、ドカーン!シャキーン!と気軽に読める作品です(笑)

2013年2月28日

読書状況 読み終わった [2013年2月28日]
カテゴリ 時代物

私立高校のバスケ部員である椎名康は、同バスケ部員・網川緑が屋上から落下する場面に遭遇する。しかし直後、彼女は失踪してしまう。大量の血痕を残して――。網川緑は生きているのか?どうやって”消失”したのか?第31回横溝正史ミステリ大賞受賞。
トリックについては多少強引な印象もあったけれど、もう一つの要素については最後まで気づかず驚かされた。現実を省みて、先入観を持っている己について恥じるばかりです。・・・つまり筆者の思惑にまんまと乗せられたということですね(笑)
読後は、トリックや謎解きよりもそういう要素を含めた高校生達の葛藤のほうが印象に残りました。どこか気怠げだけど繊細に尖った感性、現状にもがいているかんじ、青い春ですね~。もう二度とこういう刹那的な成長はできないと思います。

2013年4月15日

読書状況 読み終わった [2013年4月15日]

資産家の子息の替え玉として大学に通うエリオット。一家には盲目の娘もおり、血は繋がらなくとも大切な妹と想い、兄として振る舞っている。本当の兄妹として生きられぬことに悩む彼の前に、ある美しい男が現れるが――。第2回アガサクリスティー賞。
作者が米国大学の哲学科卒という影響が濃く、非常に耽美的で哲学的な作品。ストーリーはありますが、それよりも登場人物の言動・関係性を通して語られる作者の哲学や、耽美で繊細な雰囲気に浸る作品だと思います。
…それにしても、仕方ないとはいえ男性登場人物は皆イケメンなのに暗くって、本当に残念な人たちですねぇ(笑)

2013年2月28日

読書状況 読み終わった [2013年2月28日]

現在から一千年後の日本。人類は神の力「呪力」を持ち、注連縄に守られた集落で暮らしていた。牧歌的とも思われる暮らしの中で、無垢な子どもたちは完全に管理され、呪力を磨くよう育てられていた――何も知らされぬまま。第29回日本SF大賞受賞。
なんというか、打ちのめされた。この物語はSF/ファンタジーであるが、なんと生々しい人間の姿であることか。本作の「人間が超能力を持つ」という設定はありふれたものですが、人ならざる力を持った時に世界がどうなるか、ここまでリアルに、広い視野で考察した作品はなかなかないのではないでしょうか。その設定と視野によって描きだされる人間の姿は生々しく、特に醜い部分が容赦なくさらけ出されています。そしてそれは確実に現在を生きる私たちの中にもある。
また、とらえられた彼の最後の言葉は、私たちに「人間とは何か」という果てしない自問を強烈に残していくものだったと思います。

…それと、結構なエログロにもだいぶんうちのめされました(笑)素晴らしい作品ですが、食前食後の読書には注意なすったほうが良いかもしれません(笑)

2012年11月29日

読書状況 読み終わった [2012年11月29日]
カテゴリ SF

八王子市で起こる殺人事件を担当するのは、「椿姫」こと椿木警部(39歳独身傍若無人)と、若手刑事の小山田聡介(変態ドM)と…魔法使い!? 4編から成るミステリー。
タイトル通り、本当に魔法使いの少女が出てきて驚きました(笑)犯人は最初から読者に明かされており、小山田刑事と魔法少女が2人でトリックを暴き、証拠を集めるというスタイルでした。
とってもコミカルでツッコミどころ満載、気楽に読めるミステリーです。キャラクター描写もライトノベルっぽい。魔法使いのマリィちゃんがキュートで可愛かったです。

2012年10月16日

読書状況 読み終わった [2012年10月16日]
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