鴻上尚史のもっとほがらか人生相談 息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋

著者 :
  • 朝日新聞出版 (2020年5月7日発売)
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この人生相談の回答から、自分だけの回答を作り上げること。
その方法でしか、自分の人生は生きられない。

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鴻上尚史さんによる人生相談本・第2弾。

今回も、なかなかしんどい相談がズラッと並んでいます。
鴻上さんの人生相談は、まず相談者さんのしんどさをねぎらい受けとめる所から始まります。
そしてその上で、静かにお悩みを解きほぐし、ほがらかにビシッと歩き出すヒントをくれます。
だからこそ、読んでいてとても気持ちがよいのですが、今回は相談内容よりもあとがきのほうが、心に残りました。

「ひとつの相談に答えたら、そのパターンで似たような問題の解決法が想像つくんじゃないかと思っているからです。」(228ページ、あとがきより)

実はこの人生相談の本は、回答をただ眺めるだけでなく、似たような問題にあたったときに応用して使うための本です。
ところが実際は、恋愛相談に答えると似た状況の恋愛相談が翌月どっさり、送られてくるのだそうです。
そんなときの鴻上さんの心境は「僕としては、『う~ん。この内容は、先月と同じなんだけどなあ。アドバイスは類推して欲しいなあ』と考え込みます。」(228ページ)なのだそうです。

わたしはこのあとがきを読んで、写真家・幡野広志さんの新刊タイトル「他人の悩みはひとごと、自分の悩みはおこごと」を思い出しました。
きっと似たような人生相談を送ってくる方は、「自分の方向“だけ”を向いて、答えてほしい」「似ていてもわたしの悩みはあの人の悩みとはまったく違うのよ!」と思って、悩みを送ってくるのではないでしょうか。
ただ自分に合わせた回答を教えてほしいだけで、「自分で考えることを放棄」しているんだな、と感じました。 

これは実におそろしいことですよね。
なぜならこれは意識的・無意識的に関わらず、「問題が起きたら、誰かに解決策を考えてもらって教えてもらえばいいや」と思っているということなのです。
つまりは、誰かに考えてもらうことを委ね、自分は考えないで生きよう、という道を選んでいることに他ならないのです。

それは一見ラクな道に見えますが、逆に言えば、誰かがそばにいて考えてくれないと生きられない、つまり一生自立できない生き方です。
誰かがそばにいるうちは、それでいいのかもしれませんが、人生必ずしもそんな状況が続くとは限りません。

もし無人島にひとり、取り残されたとしたら?
もし地球上に自分ひとりになってしまったら?(なるべくそうはなりたくないけれど)

これは極端ですが、でも現代において「ひとり」になってしまう環境は、たくさんあります。
なにか問題がおきたときに「ねえ、解決策考えてよ!」といつもいつも頼ってくる人と、あなたは一緒にいたいですか?
要はそういうことです。

「自分の頭でちゃんと考えて欲しい。それだけを思っています。」(234ページ)

鴻上さんのこの言葉を胸に刻み、人生相談の回答を参考にしながら、自分の問題に引き寄せて考えて、生きる道を選んでいきませんか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 生きること、死ぬこと
感想投稿日 : 2020年10月18日
読了日 : 2020年10月16日
本棚登録日 : 2020年10月11日

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