地方病院に勤める医師を主人公とする小説で、シリーズ累計発行部数は300万部を超えています。

著者の夏川氏も医師であり、作家デビューとなる本作で小学館文庫小説賞を受賞されました。


【人の命に向き合う医師の物語】
主人公の栗原一止(いちと)は、信州の病院に勤める5年目の内科医です。

夏目漱石の影響を受けて古風な物言いをすることから、周囲の人たちからは変人扱いされています。

しかしながら、目が回るようなどんな過酷な状況でも、つねに患者の気持ちに寄り添い、誇りを持って仕事をします。

そんな一止を献身的に支える写真家の妻、ハル。

また病院でともに働く医師や看護師たちなど、登場人物はみな個性豊かで、一止を取り巻く人間関係がくっきりと描かれます。


【一止の心を動かしたもの】
ある日、一止のもとに、大学病院で働かないかと声がかかります。

大学病院に行けば、最先端の医療を学べて、医師としての成功に近づく。

しかし、一止がこれまで診てきたような、大きな病院では受け入れてもらえない高齢患者の治療はできなくなる。

悩み続けた一止の心を動かしたのは、ある患者が一止に宛てた手紙でした。


【相手の気持ちを考えること】
医師は、いつも重大な決断の連続なのかなと推測します。

夏川氏自身も、医師として働いていると、自分が一般的な常識から外れていると感じるそうです。

しかし小説を書いているときは、普通の人の感覚に戻れるといいます。

職業や立場の都合上、つい自分なりの持論や正解を持ち出すことは誰にでもありうるでしょう。

しかし、一止のように "いま、目の前の人にとって何が大切なのか" を深く考えて患者に寄り添う姿には、私も胸を打たれました。

患者のほうも、自らが病に冒されるなか、一止のことを案じています。

妻のハルも、一止のちょっとした表情や声色から、一止の気持ちを汲み取る最大の理解者です。

相手の立場に立って、相手の気持ちを考えられる人が身近にいるというのは、とても幸せなことだとあらためて感じました。

2019年9月2日

本書は大人気映画「スター・ウォーズ」を題材に、登場人物やストーリーを読み解きながら、人生を切り開くために大切なことを教えてくれるユニークな一冊です。

一貫して映画の中の世界観で語られており、各作品の写真や名シーンも多く載せられています。

スター・ウォーズファンの方なら、思わず手に取りたくなるのではないでしょうか。

私が最も印象に残った一節を紹介します。

「やる」か「やらぬ」かだ。「やってみる」はない。
作中の登場人物であるルークが、師匠のヨーダのもとで修行をする場面があります。

沼に戦闘機を不時着させてしまった弟子のルークに対し、ヨーダはフォース(※)を使って戦闘機を引き上げるように言います。
(※)「スター・ウォーズ」作品における架空のエネルギーのこと

しかしルークは、あんなに重い戦闘機を引き上げられるはずがない、石を動かすのとはわけが違うと言葉を漏らします。

これを聞いたヨーダは次のように言い放ちます。

『何も違わん!おまえの頭の中で違うだけじゃ。これまで学んできた価値基準を手放すことを学べ。』

『「やってみる」はいかん!「やる」か「やらぬ」かじゃ。「やってみる」などない。』


本書では、何事もやってみる、チャレンジすることは良いことだと書かれています。

成功しても失敗しても、そこから学べることがたくさんあるからです。

しかし、本気で何かを成し遂げるならば、「やる」という強い気持ちがなければならないといいます。

「やってみる」とは、失敗することをあらかじめ織り込んだ態度であり、失敗に保険をかけたような思いを持ち続ける限り「やり遂げる」ことは難しいのだそうです。

私はメンターから、「やる」と本気で決意している人の特徴を、
・すぐやる
・何でもやる
・できるまでやる
のように、具体的に行動を起こしている人だと教わりました。


ヨーダは、ルークの目の前で戦闘機を引き上げてみせました。

ヨーダは手本を見せることで、「できない」と思い込むルークの心理的なブロックを打ち砕こうとしたのです。

ポイントは、あることが実現可能だと「知る」ことなのだそうです。

誰かが(特に自分にとって身近な人が)困難なことをやり遂げるのを見て、それが「できる」ことだと知ると、急に「自分にもできる」とイメージしやすくなるといいます。

一度「できる」と知ってしまえば、難しさを気にして「やってみる」などと身構えることもなく、「やる」ようになります。


行動が必要だとわかっていても、不安や過去の経験から、一歩踏み出すのをためらってしまう方も多いかもしれませんね。

私はメンターから「一緒にいる人を変えて、考え方のくせを変えることが大切」と教わりつづけてきました。

私が経営を学びはじめたとき、わからないことがたくさんありました。

はじめの頃は、大きな結果をつくっている経営者の近くに、いつもいるように心がけてきました。

そうすると、私の過去の経験にはない考え方の違いや、当たり前とする価値観の違いにたくさん気がつきました。

メンターの「こうすればできる」という、考え方の前提を早く吸収して、事業の成果に結びつけてきました。

どんな人と一緒にいるかで、自分の思い込みが変わり、行動が変わる。

スター・ウォーズの世界を味わいながら、多くの学びを得られる興味深い一冊でした。

2019年7月27日

本書の内容は大きくわけて次の2つです。

・間抜けな人、すなわち"間(ま)"の悪い人たちの特徴やそれについて思うこと
・お笑い、スポーツ、映画、日常、人生などの、さまざまな場面における"間"のとらえ方

冒頭では、昨今の日本で話題になった"間"の抜けた人たちへ、たけしさんが独特のつっこみを入れています。

間抜けな人に共通しているのは、本人はそのつもりはないけど「間が悪い」とか「間を外してしまう」ことが多く、つまり自分がどういう立場・状況にいるのかを客観的に見ることができないこと、と述べています。

ご自身や周りの方の破天荒なエピソードと、その時の心境がオープンに語られていて、読み進めていて思わず何度も笑ってしまいました。


しかし、間抜けが必ずしも悪いわけではありません。

とりわけお笑いの世界においては、間抜けであることや恥ずかしいエピソードをどうにかして笑い話に変えることで、間抜けさが芸人としての勲章になるからだといいます。

それだけ、"間"というものは、あらゆる場面で大きな要素を占めています。

「お笑いを制するには"間"を制すること。」
たけしさんが話されるからこそ納得する言葉ですね。

そしてお笑いに限らず、私たちの周りにはさまざまな"間"があります。

・野球でピッチャーが投球するときの"間"
・議論や討論などで、会話に割り込むときの"間"
・映画やドラマの、役者の演技や台詞の"間"

特に映画では、カメラに映る映像の空間的な"間"や、編集時のコマ割りの時間的な"間"など、いろいろな"間"が作品の出来を左右するといいます。

映画監督として海外の映画祭に行くことで、"間"という感覚が、海外にはない日本独特の概念だということも感じたそうです。


面白おかしく読み進めながらも、いろいろな"間"の取り方について深く追求されているたけしさんの仕事に対する姿勢に、とても魅力を感じました。

さまざまな視点から物事を見ることが大切なのだなと感じましたし、私は仕事として多くの人の前で話す機会が多いので、"間"をあらためて意識して話してみようと思います。

肩の力を抜きながら読める、たいへん興味深い一冊です。

2019年5月24日

本書は短編連作で、別々の物語が何本か収録されているのですが、そのすべての作品で主人公の身近な人(家族・友人など)が余命宣告を受けてしまいます。

タイトルにある「その日」とは、いずれ誰もが体験する”亡くなる日”を指しています。

「その日」を迎えるにあたり、どう過ごしていくのか、それまでに何をするのかが描かれています。

最後に収録されている作品名が、本書のタイトルにもなっている「その日のまえに」です。

また、「その日のあとに」という後日談も描かれています。

限られた時間をどう生きるか――
人は誰もが死に向かっているのですが、あらためて余命宣告を受ける当人や周囲の身近な人たちの気持ちを考えると、とても考えさせられる作品です。

各作品の主人公たちは最初は落ち込むのですが、その事実を受け止めて残りの時間をどう過ごしていくか、気持ちや行動を切り替えていく姿に、私は感銘を受けました。

誰にも「その日」が来るので、時間には限りがあるなと痛感しました。

私も一度きりの人生、目標達成のため仕事も懸命にしますし、遊びも旅行もやりたいことをすべてやろうと思いました!

忘れがちですが、とても大切なことが書いてある作品です。
ぜひ読んでみてください。

2019年5月12日

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