とわの庭

著者 :
  • 新潮社 (2020年10月29日発売)
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本棚登録 : 3798
感想 : 382
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本当に想像力だけでこの本のみ世界を書くことが出来るだろうか?!と思う。私にも目が見えない友人がいたが、本の内容があまりにもリアルだった。聞こえるものや匂い、触った質感、歩いた足の裏の感触、変わる空気感…すべてを組み合わせて「視て」いるのだ。そして、それぞれに幸せや苦しみなどの感情が結びついている。

「幸せ」って何だろう?
私たちが苦しみを訴えるこの世界の知覚は、本当に見えているだけがすべてなんだろうか?
もちろん創作の世界ではあるのだけれど、それを問い直さずに居られなかった。今の自分の環境や生活に不満を抱くのは簡単だけれど、それは本当に「不幸」なのか?
とわは、あまりに素直でまっさらで、そして何があっても生きていく幸せを噛み締めていこうとしている。
今は、今しかない。たった今辛くても、明日は?来週は?来月は?来年は?誰にも分からない。自分が作り出していけるのだから。
私もとわのように、今を生きていきたい。
今は辛くても。そう思った。

小川糸さん、すごい。
一見逆境で最悪な人生に見えるところに、光明を見出していける、自然に。それはまるで本当に起きた人生の日記を垣間見るようだった。
こんな小説見たことない、確かに!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年11月1日
読了日 : 2020年11月1日
本棚登録日 : 2020年10月28日

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