回送先:府中市立新町図書館
大阪空襲訴訟の原告側証人である水島と弁護人であった大前による防空法の検証記録である。防空法制をめぐっては昨年の連続テレビ小説「ごちそうさん」でも仔細に触れられていることだが(制作局が大阪放送局というのもその一因であろう)、本書では感情論をある程度まで排しつつ、実際の運用が「臣民」に対してもたらされた結果について検証をおこなっているといえるだろう。
ただし、仔細に検討すればするほど水島の感情の吐露が出たくなるのだろう、法律運用の弊害部分(とりわけ、都市部からの退避禁止・「疎開」政策の抑制など)を冷徹に分析できているとはお世辞にも言えまい。「助かったかもしれない生命」のリアリズムがあまりにも大きすぎて、「叫ぶことも非難することもできなくなったものたち」に成り代わって代弁するという無謀な思考もしばし散見されることについては課題として見えてくる。
「悪法なりとも法なりき」とする見方は確かにあるにはある(その極限といえるのがナチのショアーであり、アイヒマン裁判でも問題になった「悪の陳腐さ」でもある)。だが、それすら都合のよい展開に「読み替える」浅ましさは問題だろう。そしてそれゆえに水島もまた、同じ轍を踏んではいないのかと評者は危惧するのである。
読書状況:読み終わった
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借受:多摩地区
- 感想投稿日 : 2014年5月25日
- 読了日 : 2014年5月25日
- 本棚登録日 : 2014年5月25日
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