確認先:町田市立中央図書館
数日前にルチル文庫にて再販された元の作品。ルチル版は未読なので詳細なことについての記述は避けるが、結論から言えば愁堂作品の中ではハズレの部類に属する。
展開が読めるということも確かに問題ではあるのだが、評者がみるに前提条件の古さ(というか時代錯誤としか思えないような位置づけ)に愕然とする。受けを花嫁と位置づけるのはBLにおいてはままあるケースでありそれについては評者は批判する意図はない。問題は本書に通して存在するメタファーの入れ子作用にある。
花嫁という言葉が受けのメタファーであるとした場合、受けと攻めが警備しようとした指輪は純潔のメタファーで、それをさらっていこうとする怪盗はさしずめ強姦かと勘ぐりたくなるような配置が問題なのだ。
このような配置に見えるのは、受けはただ一つの攻めに対してのみ己の貞操を捧げねばならないという19世紀ヴィクトリア調のセックスコントロールの焼き直しとしてのBLがあるからであり、初版当時まだあったジェンダーバックラッシュのことを頭の脇に置いておくならばそれで逃げようとした甘さも評者の不満を膨らます。
なお、蓮川のイラストが救いになると思いたい人もいるであろうが、蓮川イラストの中にある見えない異性愛主義(無意識上の異性愛主義)が愁堂の文体によって透けるのであまり期待しない方がいいだろう。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
借受:かながわ
- 感想投稿日 : 2011年2月17日
- 読了日 : 2011年2月3日
- 本棚登録日 : 2011年2月15日
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