知的生活の方法 (講談社現代新書 436)

著者 :
  • 講談社 (1976年4月23日発売)
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本棚登録 : 1959
感想 : 206
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 本書はいわゆるHow to本といったたぐいのものではありません。どちらかというと、知的生活のための姿勢や考え方を説いた書というべきでしょうか。
 とにかく著者の妥協を許さない姿勢に圧倒されます。読み進めるたびに「ああ、自分は己に甘かったなぁ・・・」と反省することしきりであったとともに、勉学に対するモチベーションが一段と高まりました。

 「1.自分をごまかさない精神」では、わかったふりをせず、わかるまで突き詰めることの重要性を説いています。
 「2.古典をつくる」では、繰り返し読むこと。それを通して本物を見極める眼力が身に付き、手元にも本物だけが残っていくことが述べられます。
 「3.本を買う意味」では、身銭を削って本を買うこと、どんなに貧乏であっても本を買い、読み続けることの大切さを、実体験などを引用して説明してくれます。
 「4.知的空間と情報整理」は、本書には珍しい情報整理のHow to説明です。カードシステムを用いた情報整理法にとどまらず、知的生活を送るための家の間取りを、設計図(間取り図)までつけて説明しています。
 「5.知的生活と時間」、「6.知的生活の形而下学」では、日々の生活上の工夫や人との交歓や食について説明しています。知的生活を送るうえで好ましい食材・料理を取り上げる中で、カントの食べた献立なども紹介されておりユニーク。

 印象深いのは「1.自分をごまかさない精神」において、「本当にわかる」ことの体験談を述べている下りです。

「・・・しかし一生を外国語にかけた男として、そのような状態には決して満足したわけではなかった。私の頭からは少年のころに、あのようにぞくぞくする気持ちで読んだ『三国志』や少年講談や捕物帳のことが去らなかった。
・・・「私の英語は本物ではない」という不全感は常に去らなかった。
・・・どうしてもその不全感に耐えかね、断固とした手段をとることにした。つまり留学のし直しである。」

 留学することの是非はさておき、その徹底ぶりはやはりすごい。

 そして、留学先で外語小説を本当に「わかった」時の描写、

「(『マジョリー・モーニングスター』を読み始めたところ)引き入れられるように面白い。そして終わりに近づいてきたら、がくがくと身震いがしてきて、読み続けることができなくなった。
・・・私は心を落ち着けるために風呂に入った。そして残りの4ページ半を読んで、この記念すべき小説を読了した。これは私にとってまさに記念すべき夜であった。
・・・それを子供のころに少年講談や『三国志』を読んだ時のような興奮で読み終えることができたのだ。ついに英語についての私の不全感は吹き飛んだのだ。私は踊り狂いたいような気になった。」

 これが「わかる」ということなのだ!といわんばかりの描写です。自分がこのような興奮をもって読了した経験が果たしてどれだけあったことか・・・。
 このような興奮をもたらす作品に出会うまで、著者は本を読み漁ります。それほど熱意を持って臨まねば本物には出会えないが、出会うことができたならば、これに勝る幸はないことを教えてくれるエピソードです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 自己啓発
感想投稿日 : 2019年6月8日
読了日 : 2019年6月8日
本棚登録日 : 2019年6月8日

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