豊饒の海 第四巻 天人五衰 (てんにんごすい) (新潮文庫)

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レビュー : 196
著者 :
一樹さん  未設定  読み終わった 

再読です。
若い頃はものすごい美青年が転生するってだけで読み切ったのですが(笑)、今となって読むとまさに暁の寺、天人五衰の本田と同じ年代となって、物語の様相は全く変わりました。
はっきり言って最終巻はかなり面白く読めました。
天人が衰えて聖なる力を失い死んでゆく様相は大変恐ろしく醜悪で、ついうっかり夢枕爆の「腐りゆく天使」のイメージと重ねてしまいましたが、所詮凡人はハナから天人ではありません。
なので年老いて醜悪な本田にかなり共感してしまいます。レスビアンの慶子との友情も微笑ましく羨ましいとさえ思ってしまいました。
自分は選ばれた天人だと証明しようとして、失敗した透の朽ち果てて行くような生き様も、むしろ良いと感じます。

豊饒の海を読みながらずっと考えていたのは、なぜ清顕が転生するのかと言う事でした。何のために、どんな資格があって???
清顕はものすごい美青年ではありますが、特に心根が美しいとか純粋と言うわけではなく、むしろ愚かな若者の印象が強かった。聡子との恋も意図的に手遅れにしてしまってから初めて燃え上がり、相手も自分も滅ぼし尽くす道を行く印象。

その反面奔馬の勲は、若いが故に忠義において誠実で純粋で、わかりやすいです。周りの分別ある大人たちに寄ってたかって止められ、無罪放免にされてゆく過程はあまりに残酷で無残でした。

ジンジャンに至ってはどう言う人物なのかほとんど書かれていません。勲が信念など持たない、感情と肉体のみで生きる女性になりたいと願ったからなのでしょうか?

そして最終巻の最後、本田が全ては夢か幻だったのか?と唖然とするくだりは、圧倒的な美しさと印象で突き刺さります。
まさにこの場面のために三島はこの4部作を書いたのではと……

人生は夢のまた夢。清顕は子供時代から理性と知識のみで生きようとした本田の追い続けた憧れであり、愛なのかと。

なにはともあれ久しぶりに純文学を読み、色々考えさせられて、とても楽しい読書となりました。

レビュー投稿日
2019年1月16日
読了日
2019年1月14日
本棚登録日
2019年1月14日
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