冬姫 (集英社文庫)

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レビュー : 42
著者 :
yumiieさん  未設定  読み終わった 

戦国武将・織田信長の二女冬姫。その器量の美しさ故
父親からは格別に遇されたという冬姫を中心に、戦国の世の
女戦の生き様を描いた物語。

信長は婚姻による外交に長けており、冬姫の姉にあたる五徳
(徳姫=おごとく:九歳)を、徳川家康の嫡男信康の正室として輿入れさせ
また、妹のお市の方(冬姫の叔母)は近江の雄、浅井長政の元に嫁がせ
親せきとすることで美濃、近江の同盟を成功させている。

そして冬姫は――信長との観音寺城の戦いで敗れた
六角氏に仕えていた蒲生賢秀(がもうかたひで)が、三男(嫡男)忠三郎を
信長に人質として差し出すことで蒲生家は、織田家に臣属したのだが
その忠三郎(ちゅうざぶろう)というのが14歳のりりしい顔立ちの利発な若者で
以後信長に気いられ、冬姫との婚姻へとあいなるわけである。
蒲生忠三郎(後の蒲生氏郷:うじさと)14歳、冬姫は12歳だった――

なんだかとっても難しそうなお話ですが、この時代、とかく女子は
男の政の道具の一つであるかのような扱いで、敵も味方もなく
振り回されていました。輿入れといえど恋も愛もあったものではありません。
けれども一旦添い遂げれば、お互いを深く理解しあって愛を育んでいく...。
夫のためお家のためにと尽くしていく、女にも女ならではの戦があったのです。

ここに登場する女性陣の面々は、冬姫、五徳、お市の方のほかに
信長の正室・帰蝶(濃姫)、側室・鍋の方、家康の正室・築山殿(瀬名姫)
明智光秀の娘・細川ガラシャ、そしてお市の方の長女・淀殿(茶々姫)と
女だてらにも何かしら戦国の世を揺るがしたであろう錚々たる顔ぶれが揃います。

そんな中での冬姫は、少し控えめで目立たない存在のよう...。
けれどもその器量の美しさの中には利発さも兼ね備え、そして、逆境に対して
前向きにとらえていく心を持ち、夫を愛し、父親を愛し、お家を愛し、支え尽くす
冬姫の凛とした姿は清らかです。読んでいてとても清々い気持ちになりました。
さらに言えば夫・蒲生忠三郎も然り。利発で雄々しく逞しく、そして何より
妻を愛する気持ちは優しさにあふれています。史実でも生涯側室を
持たなかったとあるほど...。

そして作中ではわずかな登場でしかありませんでしたけれど、帰蝶(濃姫)さまの
凛として揺るぎない佇まいが際立って感じられたところも好きでした。

少し冷めた心で考えてみれば、女の戦などただのお家騒動。
痴話げんかではないかとも思えてしまいますが、男にも女にも
誰にもどこかに愛するものを守りたいという気持ちがありました。
織田信長は偉大なお人です。それを二分してしまうなんて...あぁ..秀吉!!(笑)

戦国の女戦の物語でありながら、信長と秀吉のやってきた政についても順を追って
添えられているため、歴史書物としても充分に読み応えがあり楽しめました。
読んでよかったです。

レビュー投稿日
2018年2月8日
読了日
2018年1月21日
本棚登録日
2018年1月29日
13
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