蜜蜂と遠雷

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本棚登録 : 10512
レビュー : 1394
著者 :
ハナシェンコさん 小説   読み終わった 

あまりの感動に打ち震えた。この本を読めて本当によかった…
読む途中途中、栞を挟み閉じる時、あまりの愛おしさに本の表紙を撫でてしまった。


国際的なピアノコンクールに出場する4人のピアニストそれぞれの物語で、恐らく主役はこの人だろうという人はいるが、
読む人によって真の「主人公」は異なってくると思う。
様々な性格、立場、境遇…
突如現れた「巨匠からのギフト」の鬼才の少年 塵、
「元天才少女」で音楽に愛し愛される女性 亜夜、
幾多の風土の雰囲気を併せ持つサラブレットプリンス マサル、
音楽は天才だけのものではないと「生活者の音楽」を表明する 明石

もうこの4者の立場の違いだけでも失神しそうになるほど良かった。プロローグともいえるコンクールが始まる前から夢中になった。
とりわけ私は明石に感情移入をした。私も社会人で、趣味でものを作ったりするのが好きだからだと思う。
私も学生の頃選べなかった、選ばなかった人生があって、
それを今選んで生きる人への憧れのようなものがまったく無い訳ではなく
でも自分の選択を間違っているとも思っていない。そういう、複雑な感情を抱えて生きる中で

明石の「音楽は天才だけのものではない、生活するなかで音楽は共にあり、音楽を「聞ける」人は普通に暮らす人のなかでもたくさんいる。
自分はそれを示したい…と、家庭を持ち働きながらもコンクールの準備を睡眠時間を削りながら行った。

もう本当にわかりみが深い。働いてたら睡眠時間削るしかない。そしてなんと勇気が出る事だろう。
わかる気がするから。私が「天才が天才として驀進しながら掴み取る世界」を一生理解できないように、
天才にはこちらがわの「普通の生活をしてるからこその苦楽や感謝」がわからないであろう事が。


彼が戦いを挑んでくれたことに本当に勇気をもらった。
第二審査の時の課題曲に含まれるカデンツァは各自の解釈で自由に演奏していたが(クラッシックに詳しくないのでどういうものか正確にわからなかったけど、たぶんこれで良いんだと思う)
「春と修羅」という日本人作曲家の曲で、詳しくはまぁ原作を読んでくれという感じなのですが
(説明するのが面倒なのではなく原作が最高なのでいいから読んでほしい)
明石は解釈を深めるために車で…縁の深いところへ視察にいってて…真面目か…!!!真面目かよ…!!!と本当に胸を打たれたし、
他の天才達が「宇宙」とか「自然」とかそういった大きなテーマを感覚で表現しているのに対し、
なんて真面目で平凡で平均で、そして丁寧で真摯なのだろう。
めちゃくちゃ胸を打たれてしまったし、もう明石がコンクール優勝してスピーチで
「生活者の音楽をこれからも世界に届けていきます」みたいなことを言うの想像して感極まった。

なんでこんなに胸打たれるんだろうと考えた時、
自分がプラネタリウムの漫画を描くにあたり、資料集めかねて3箇所くらい都内のプラネタリウムを巡ったりしたことを思い出して、そっかぁと思いなんだか泣けてしまった。

自己陶酔かよといわれればまぁそうなんだけど、明石という登場人物はそういうポジションなんだと思う。
異なる才能を持ち合わせた若き3人の天才は、ほんとうに魅力的だし音楽だけでなく人柄も愛らしい。とても好きだ。
でも一般的な読者が感情移入するには難しい部分もあるかもしれない。
前述した通り、読む人によって主人公がかわるので言い切るのは乱暴かもしれないし、亜夜は明石と違う種類の人がどうしようもなく惹かれる人かもしれない。
でも明石という人は「共感」を担ってくれる人で、天才ではない人をこの物語の世界に優しく招きいれてくれている様に思えました。

明石はそういう意味でも、音楽を愛する人と、音楽を日常に添えるように生きる人、音楽を知らない人全てを繋いでくれると思う。

明石の話ばかりになってしまったけど、この蜜蜂と遠雷はあまりに出来がよく、完成されていて恩田さんの本をはじめて読む私にとって本当に衝撃的でした。
最初手にとった時は分厚いし2段組だし読みきれるのか!?と不安になりましたが、不安に思う事などなにもなく、後半は終わりに近づいていくのが寂しかった。

実写化しないのかな?と調べたところ「映像にしてしまうと音の正解を定めてしまうようで」みたいなこと書いてあってまた痺れた。最高。かっこいい。
確かに文章だからこその演奏はあると思う。特に風間塵の演奏は読み手一人一人でまったく違いそうだ。

映像化されないということはこの素晴らしい物語を知る人は読んだ人だけということになる。それは少し寂しい。
どうにか一人でも多くの人に読んでほしいと思いました。長いけど!!頑張ってほしい!!!音楽は素晴らしい!!!

レビュー投稿日
2018年2月3日
読了日
2018年2月3日
本棚登録日
2018年1月3日
5
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