農業問題入門 新版

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  • 大月書店 (2003年2月1日発売)
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 一般的に農業政策が語られる際、FTAやEPA,TPPといった「自由化」の波に乗る形のグローバル路線か、または農業の多面的機能や食料安全保障を唱え、グローバル化に対抗する保護主義か、という二つの価値を巡る議論になる。
 これらは究極的には「自由」か「平等(保護主義)」かという、古いけれどいまだに継続する価値の対立に行き着く。本書はどちらかと言えば保護主義基調であるが、決してそれだけにとどまらない。自由と平等(保護主義)を踏まえたうえで、異なる視点を提供する。すなわち 『農業問題を体制的危機にかかわる問題ととらえ、農業政策の一面を国民の体制への社会的統合策ととらえる』、これが本書のメインテーマである。
 本書は「自由」と「平等」という従来の価値観に、いわば「いかに統治するか」という視点を投げかける。この「社会的統合」=「統治の在り方」という視点が加わると、今まで「自由」と「平等(保護主義)」を巡って語られてきた農業問題の議論が、いかに表層的だったのかがわかるだろう。そして、この「統治の在り方」という視点は、あらゆる社会問題においても通じるものだと気付く。
 本書は「農業問題入門」と謳っているが、政治学、経済学、国際関係、歴史その他の学問的基礎がないと読み進めるのは厳しいかもしれない。そして、何よりも「社会的統合」というキーワードを読者が踏まえていなければ、理解できない箇所が多々ある。しかし、「社会的統合」を意識して読み終えたとき、きっと農業問題の体系的知識を身に付けることができるだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 公共政策
感想投稿日 : 2012年8月16日
読了日 : 2015年12月31日
本棚登録日 : 2012年8月16日

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