交換殺人には向かない夜: 長編推理小説 (光文社文庫 ひ 12-5)

著者 :
  • 光文社 (2010年9月9日発売)
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本棚登録 : 3001
感想 : 238
4

すごーく面白かった。
限りなく☆5に近い☆4。

解説にあるように、タイトルで交換殺人を扱うことを公言し、そのつもりで読む読者をあっと言わせるのは、かなりハイレベルな訳で、それを期待以上にやってのけられた感。
やや古めかしいセンスのギャグのノリも楽しいし、解決編の説明が懇切丁寧で万人に分かり易い。
そして真相が分かると、最初から計算されて張られた伏線の妙にも唸らされる。
東川篤哉凄い。

相変わらずドタバタの鵜飼探偵だけど、今回は知性が感じられて良かった。特に善通寺咲子との会話でセレクトされた語彙が、すごく感じ良かった。
朱美や流平、志木刑事に警部とお馴染みの登場人物が活躍する上、二作目に登場した十乗寺さくらが再度出てきたりして、シリーズにも厚みが出てる。

「わたし」が何者かに尾行された挙げ句、話しかけられた第一声が「実は交換殺人の話なのですが」だという、読者の心を鷲掴みにする穏やかでない冒頭では、この「わたし」の性別を巧みに隠蔽してる。(実は女かもとは思った)
善通寺咲子と夫の春彦との会話に何かありそうで、咲子は妻なんかじゃなくて家政婦だったりして…なんて疑った(外れた)。
志木刑事と和泉刑事のシーンが3年ズレてることも、和泉刑事=水樹彩子=善通寺咲子=冒頭の「わたし」だということも全く気付かず、気持ち良く騙された。

ちょっとだけモヤッたのは、権藤英雄の存在が終盤消えてしまったこと。ひょっとしたら英雄は、父親を自らの手を汚さずに始末すべく3年前の事件と善通寺咲子を利用したんじゃないか。などと勘ぐってしまった。完璧なアリバイ用意してたし。
これで英雄が全く追求されないのはなんか解せない。

どうでもいいけど、ブクログの書影の表紙絵、めちゃネタバレやん…(私の読んだ文庫の表紙絵とは違う)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 東川篤哉
感想投稿日 : 2021年6月14日
読了日 : 2021年6月14日
本棚登録日 : 2021年3月7日

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