空飛ぶ馬 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

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本棚登録 : 3680
レビュー : 499
著者 :
ゆうすいさん 北村薫   読み終わった 

ほとんど純文学を読んでいるかのような心地だった。

主人公の19歳の文学少女(敢えてそう呼ぼう)の、大人になりきる少し手前の繊細な感性が、淀みない文章で丁寧に表現されてゆく。
日常のふとした出来事で、彼女の中にこれまで読んできた物語の一節が思い起こされ、重ねられていく。主人公が趣味で見に行く落語の物語も、日常の諸処でいろいろなことを教えてくれる。
最も感動的だったのは、主人公が友達と夏の蔵王に旅行した際、深緑の山を見ながらまだ見ぬ錦秋の頃を想像し、かつて読んだ本の中にその風景を見いだし、疑似体験をする場面。
物語は知らない風景だって見せてくれるのだ。
読書はこうも人生を豊かにするのだ。
主人公と同じくらいの時にこの本に出会いたかった。そうすれば若い頃もっと読書したのに!

…で、矛盾するようだけど、私は純文学にちょっと苦手意識があって、この本も読むたびに居住まいを正さなければならない気分になって、引き込まれるように読むのとは違った関わり方をした本だった。
でも、一度読んで終わりにするのは勿体無い。再読することで気づかなかった発見がある本だと思う。

落語家の円紫さんが、類い稀なる洞察力で、日常に起こる謎な出来事を、状況を聞いただけで解決しちゃうライトミステリです、本来は。

レビュー投稿日
2017年4月7日
読了日
2017年4月7日
本棚登録日
2017年4月7日
3
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