乙一さんといえば私は真っ先にZOOとか私の死体を思い描いてしまうけれど、こういう話も好き。一色変わった愛情が心地よい。涙というより雨なイメージです。
▽Calling You
ドラえもんにありそうな脳内電話器を使えるようになった主人公たちの話。確定した、避けることもできる死に向かって着実に進んでいく静かさが好き。好きな人に生きてほしいと嘘をつくリョウと、結局彼女を守ったシンヤ。最期の電話のシーンは何度読んでも胸につく。
▽失はれる物語
題材も物語も好き。乙一さんらしい。事故で右腕以外の感覚を失った夫と、指書きで語りかける家族の話。夫の判断は正しかったのかな。妻はどちらのほうが幸せだったんだろう。「ごめんなさい。ありがとう」をどんな気持ちで言ったかは、肉声と筆圧とどちらが伝わりやすかったんだろう。
▽傷
思い出も相まってぼろぼろ泣いてしまった。他人の傷を引き受けることのできる能力を持つアサトとぼくの話。ばかみたいな感想になってしまうけれど、アサトがぼくに傷を移してくれて本当によかったと思う。たとえ他人の痛みがわかるからってそれを代わりに受けようと思うのは駄目だ。絶対に釣り合わないから。
▽手を握る泥棒の物語
▽しあわせは子猫のかたち
乙一さんらしい。この世にないものが、まるで存在しているかのように静かに確かに息している感覚がすごく好き。鈴の音や菜園の色色が浮かぶ。強烈な生の風景の中で、幽霊と暮らす不思議さというかなんというか。猫かわいい。
▽ボクの賢いパンツくん
▽マリアの指
シュールな存在感を持つマリアが線路上で轢死した。遺書から自殺だと判断された。かき集められた断片からは指が一本欠けていた。
ホルマリンにみちみちた瓶を振って、中の指をじいっと見つめている少年を思うだけで不思議な気分になる。シックホルム症候群のくだりは結構好き。
▽ウソカノ
- 感想投稿日 : 2013年4月30日
- 読了日 : 2013年4月30日
- 本棚登録日 : 2013年4月30日
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