定本 種田山頭火句集

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レビュー : 1
著者 :
制作 : 大山澄太 
yuzuringo102さん  未設定  未設定

山頭火の句は、無常だ。永遠に止むことなく、道の上で徘徊していたものの記録。同じところに佇むことを決して許すことない命の運動の前では、詩人はひれ伏すしかない出来ない。そして山頭火にあっては、それは紛れもなく、自然の円環への没入であったのだろうと思う。

そして思い出したのは、「今魅力的だな」と思えるものに触れることが大事だということ。破格であろうが、異端であろうが、権威がなかろうが、関係ない、今、自分が魅力的だな、とかなんか気になるなというものに圧倒的に触れていよう。そういうものを探し続けよう。どこかにある、どこかで出会える。山頭火と同じように、

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分け入つても分け入つても青い山

★歩きつづける彼岸花咲きつづける

★だまつて今日の草履穿く

しぐるるや死なないでゐる

しぐるるやしぐるる山へ歩み入る

★涸れきつた川を渡る

★分け入れば水音

捨てきれない荷物のおもさまへうしろ

あの雲がおとした雨にぬれてゐる

それでよろしい落葉を掃く

まつたく雲がない笠をぬぎ

★また逢へた山茶花も咲いてゐる

★見すぼらしい影とおもふに木の葉ふる

あるひは乞ふことをやめ山を観ている

★笠も漏りだしたか

★霜夜の寝床がどこかにあらう

鉄鉢の中へも霜

★いつまで旅することの爪をきる

★ほろりとぬけた歯ではある

ふるさとは遠くして木の芽

★しづかな道となりどくだみの芽

★朝からの騒音へ長い橋かかる

★あるけば蕗のたう

★椿ひらいて墓がある

★かさりこそり音させて鳴かぬ虫が来た

★あざみあざやかなあさのあめあがり

★うつむいて石ころばかり

旅の法衣がかわくまで雑草の風

★はれたりふつたり青田になつた

★草しげるそこは死人を焼くところ

笠をぬぎしみじみとぬれ

山あれば山を観る
雨の日は雨を聴く
春夏秋冬
あしたもよろし
ゆふべもよろし

炎天かくすところなく水のながれくる

風の枯木をひろうてはあるく

★うれてはおちる実をひろふ

★人を見送りひとりでかへるぬかるみ

★水音のたえずしていばらの実

しぐるる土に撒いてゆく

椿のおちる水のながれる

枯れたすすきに日の照れば誰か来さうな

蜂がてひちよが草がなんぼでも咲いて

けさは水音も、よいたよりでもありさうな

◉閉めて一人の障子を虫が来てたたく

ひよいと穴からとかげかよ

うれしいこともかなしいことも草しげる

★食べる物はあつて酔ふ物もあつて雑草の雨

いつでも死ねる草が咲いたり実つたり

日ざかり落ちる葉のいちまい

★彼岸花さくふるさとはお墓のあるばかり

★重荷を負うてめくらである

◉何か足らないものがある落葉する

★昼寝さめてどちらを見ても山

◉道がなくなり落葉しようとしてゐる

あるけば草の実すわれば草の実

★春が来た水音の行けるところまで

★さてどちらへ行かう風がふく

★この道しかない春の雪ふる

けふはここまでの草履をぬぐ

★燕とびかふ旅から旅へ草履を穿く

山行水行:さんこうすいこう

★みごもつてよろめいてこほろぎかよ

残された二つ三つが熟柿となる雲のゆきき

★落葉ふかく水汲めば水の澄みやう

寝たり起きたり落葉する

◉ちょいと茶店があつて空瓶に活けた菊

★ひつそり咲いて散ります

照れば鳴いて曇れば鳴いて山羊がいつぴき

空へ若竹のなやみなし

◉青葉の奥へなほ径があつて墓

★くづれる家のひそかにくづれるひぐらし

死をまへに涼しい風

風景は風光とならなければならない。音が声となり、かったいがすがたとなり、にほひがかほりとなり、色が光となるやうに

或る時は澄み或る時は濁る。澄んだり濁ったりする私であるが澄んでも濁っても、私にあつては一句一句の身心脱落である

★春風の扉ひらけば南無阿弥陀仏

春の海のどこからともなく漕いでくる

★また一枚ぬぎすてる度から旅

◉行き暮れてなんとここらの水のうまさは

あるけばかつこういそげばかつこう

★こころむなしくあらなみのよせてはかへし

◉砂丘にうづくまりけふも佐渡は見えない

荒海へ脚投げだして旅のあとさき

◉酔ざめの風のかなしく吹きぬける

★こころおちつけば水の音

★からむものがない藁草の枯れてゐる

◉歩くほかない草の実つけてもどるほかない

◉立ちどまると水音のする方へ道

何を待つ日に日に落葉ふかうなる

◉涸れてくる水の澄みやう

風はなによりもさみしいとおもふすすきの穂

何事もない枯木雪ふる

◉ふたたびは踏むまい土を踏みしめて征く

★雪へ雪ふる戦ひはこれからだといふ

その一片はふるさとの土となる秋

風の中おのれを責めつつ歩く

★雨ふればふるほどに石蕗の花

死のしずけさは晴れて葉のない木

★いつとなく机に塵が冬めく

なんとなくあるいて墓と墓との間

葦の穂風の行きたい方へ行く

★鳴いてきりぎりす生きてはゐる

★壁がくづれてそこから葦草

それは死の前のてふてふの舞

春の山からころころ石ころ

水のまんなかの道がまつすぐ

◉石に腰を、墓であつたか

レビュー投稿日
2016年6月12日
本棚登録日
2016年6月12日
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