黒い手帖 (中公文庫)

3.54
  • (2)
  • (4)
  • (6)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 61
レビュー : 5
著者 :
yuichiさん  未設定  未設定

推理小説ブームになった。特に女性の間で人気である。
このことについての松本清張の見解は、近頃の小説がつまらなくなったからだと言っている。

いつも似たような杉の繰り返し、同じような人物のシチュエーション、変わり映えのせぬ背景、それらの反乱にロマン小説の愛好者である女性読者が退屈し、本の途中からあくびをしはじめたからではあるまいか、と言っている。
また、その間隙を、ともかくもサスペンスがあり、謎があり、人間の智慧の掃討を主題にした推理小説が進出してきたのであろう。普通の小説があまりに一色になりすぎたため、読者がその平板さに飽き、変った小説を手に取り始めたという現象と言えないだろうか、と言っている。

・中間小説というのは、大体、純文学畑の作家が、みずから調子を落として書く面白さを狙う小説だということになっている。

・作家の才能の素質は、言葉の便利の上で言えば、私小説的な構成の型と、物語的な構成の型とに分けてよかろう。

・トリックを主体とした探偵小説を本格派といい、それから外れたものを変革派と言った。

【一般に犯罪は、金銭の上のこと、愛欲、復讐、自己防衛と言った動機から起ることが多いと思われます。こういうものは、われわれが人間生活をしている以上、いちばん多いケースであることは勿論で、これを否定するわけではありませんが、それ以上に、もっと人間的な感情とか意識から生れる犯罪だってあるのではないでしょうか。われわれが、普通平凡な日常生活を送っているときには、まったく影をもとどめていないように見えるけれど、実は自分でも気のつかない意識を心のどこかにもっている、ということが考えられるのです。そして、ひとたび、なにか異常な事件にぶつかると、ヒョイとその隠された意識が飛び出し、それが行為に発展するのではないかと考えられます。したがって、隠された意識、われわれが気がつかないところの第二の意識、奥底の意識を引き出して、それから起るところの事件なり犯罪は、それこそ相当人間性の突っ込める分野ではないかと思います。】

レビュー投稿日
2010年2月19日
本棚登録日
2010年2月13日
0
ツイートする
このエントリーをはてなブックマークに追加

『黒い手帖 (中公文庫)』のレビューをもっとみる

『黒い手帖 (中公文庫)』のレビューへのコメント

コメントをする場合は、ログインしてください。
ツイートする