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或るひとつの差異がおのれをそこから抜き取るその表面的な反復に、その差異が(深さにおいて)必然的に所属している場合、そうした差異の本質はどこにあるのかを知ることが問題になる。そうした差異は縮約であるが、しかしこの縮約の本質はどこにあるのだろうか。そうした縮約はそれ自身、弛緩のすべての水準とすべての度においてそれ自体と共存する或るひとつの過去のもっとも縮約された度、もっとも緊張した水準ではないだろうか。各瞬間、過去全体が、ただし、様々な度と様々な水準において[それ自体と共存する]。現在の度と水準は、それらのうちのもっとも縮約されたもの、もっとも緊張したものでしかない。それが、ベルクソンの輝かしき仮定であった。その場合、現在の[現前する]差異はもはや、先ほどのようには、諸瞬間の表面的な反復から抜き取られて、その反復が存在するのに必要不可欠な或る深さを素描するような差異ではない。
- レビュー投稿日
- 2011年1月7日
- 本棚登録日
- 2009年12月14日
『差異と反復〈下〉 (河出文庫)』のレビューへのコメント
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