一灯

  • 青空文庫 (2000年4月27日発売)
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『あのように純一な、こだわらず、蒼穹にもとどく程の全国民の歓喜と感謝の声を聞く事は、これからは、なかなかむずかしいだろうと思われる。願わくは、いま一度。誰に言われずとも、しばらくは、辛抱せずばなるまい。』

確かに太宰の言う通り、皇太子殿下の御誕生に街いっぱいが笑顔になって、「やあ、おめでとう!」なんて言い合ってほかはどうでも良くなるようなことは、ないのかもしれませんね。天皇の尊厳に対しての世間の捉え方も、この小説が書かれた当時とはだいぶ差異があるように感じますし……。そういう意味では何度も名状しがたい気持ちになりますが、話は明るくてこちらも「バンザイ」と言ってみたくなるので、好きです。冒頭──『芸術家というものは、つくづく困った種族である。鳥籠一つを、必死にかかえて、うろうろしている。その鳥籠を取りあげられたら、彼は舌を噛んで死ぬだろう。なるべくなら、取りあげないで、ほしいのである。』──からの太宰の決意を感じる文章も、心に残りました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2022年1月23日
読了日 : 2021年12月28日
本棚登録日 : 2021年12月28日

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