フェオファーン聖譚曲 op.II 白銀の断罪者

  • サンクチュアリ出版 (2020年7月31日発売)
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感想 : 1
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op.1が世界観の共有と社会的課題の提示という位置付けである序章であったとしたら、op.2である本作は序章を受けて社会変革を目指す計画の提示と実行準備を描いた第一章と位置付けられる。とても多くの人物が登場するが、極めて分かりやすい形で立場が明確になっており、読み進むうえで困ることはない。これだけの広がりを持つ長大な物語において、このことはとても重要だ。そして、報恩特例法という設定が単なる貴族中心社会という社会的課題だけでなく、王家安定のための暴力装置を作り出す法的根拠となっており、すべての陣営を縛っているところが面白い。その絶対的制約を軽々と乗り越え、さらには自然の理すらものともしない「神」的存在が革命を目指すというのは、なんともワクワクするではないか!「神」に匹敵する魔法が使えるというのは、ある意味反則に近いような気もするが、超人的な力で悪をねじ伏せるという構図も単純に面白い。そのうえ、宗教的なうねりを人工的に作り出し、それを己が陣営の力に変えていくという発想が、キリスト教を先兵とした帝国主義の勃興期を彷彿とさせて興味深い。op.1の時にも思ったことだが、こういう物語は勧善懲悪でスカッと読みたい。そういう感情を十分に満たしてくれている作品だ。圧倒的なリーダビリティと生き生きとしたキャラクタの織りなす壮大な叙事詩の先行きが楽しみである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 冒険小説
感想投稿日 : 2020年8月8日
読了日 : 2020年4月17日
本棚登録日 : 2020年8月8日

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