
自然状態は平等だったのに、社会状態には不平等が溢れている。この主張を核とし、自己愛と憐れみの情を人間の本質と置きながら社会の不平等の起源を明らかにしようとする、ルソーの代表作である『社会契約論』への助走となる書物。なのだが、序文を読むと「もはや存在せず、恐らく存在したことがなく、多分これからも存在しそうにない一つの状態に対する正しい観念をもつことが、現状を十分に認識するのに必要なのだ」という記述が存在する。ルソーが本当に言いたかったのは、「自然に帰れ」ではなく「自然を目指せ」だったのではないかという疑惑が、どうしても拭えない。
- レビュー投稿日
- 2012年6月19日
- 読了日
- 2012年6月19日
- 本棚登録日
- 2012年6月19日
『人間不平等起原論 (岩波文庫)』のレビューへのコメント
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