マーク・ブキャナン『複雑な世界、単純な法則』、ダンカン・ワッツ『スモールワールド・ネットワーク―世界を知るための新科学的思考法』は一般読者を射程に入れた入門書なのに対し、本書は大学の理系新入生が読むのに最適な啓蒙書だと思う。スティーヴン・ストロガッツは自らの研究テーマである「同期現象」を梃子に現代物理学を概観することに成功している。とくに「相転移」や「エントロピー」といった熱力学に関する言及は示唆に富んでおり、僕自身が研究で取り組んでいた「蛋白質のリフォールディング」についても考え方のヒントが眠っているように感じた。あとは、研究に対する姿勢も学ぶところが多い。「専門バカ」なのは間違いないのだが、助けてくれる異分野の研究者を引っ張ってくることが重要だとか、軸はぶれてはならんが手法は柔軟に変えるとか、目的のために手段を選ばないという貪欲な姿勢は、日本人の理系なひとたちに足りない点だと思う(僕もそのうちのひとりだ)。楽しいから、美しいから、研究者は考えるのだ、ということを再認識できた良書。ただ若干専門的なので☆☆☆
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
サイエンス
- 感想投稿日 : 2012年4月22日
- 読了日 : 2012年4月16日
- 本棚登録日 : 2012年4月5日
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