2000番(タイトル数)を突破したことを記念して、過去3回にわたりブルーバックスの魅力に迫ってまいりましたが、最終回を飾るのはブルーバックス編集部の紅一点である家田さん。「趣味」という切り口でバリエーション豊かなブルーバックスのおすすめ本をご紹介いただきました!
趣味のブルーバックスから3月最新刊までおすすめ8タイトルプレゼント企画も実施しています!最後までお見逃しなく!
取材・文・撮影/ブクログ通信 編集部 持田泰 猿橋由佳
科学だけでなく「趣味」からセレクトするブルーバックス!
−今回は、ブルーバックス編集部紅一点である家田さんからフラットな切り口で、改めて魅力的なタイトルをいろいろご紹介いただければと思います。3回にわたってお話をお伺いしますと、ブルーバックスは「科学」をテーマとしているからこそ、様々な読み方に「応用」できる底力というものを感じます。
そうですね。これまでにも他の編集者が紹介してきたように、正面から科学を扱う本ばかりではなく、身近なテーマを取り上げた手に取りやすい本も多いです。たとえば、趣味に役立つ本もたくさんあります。
-おお!その切り口はおもしろいですね!「趣味」に関係する、ブルーバックスでおすすめの本はありますか?
『山に登る前に読む本』(2014年)は、長らく続いている登山ブームや昨年「山の日」(8月11日)が新設されたこともあって、多くの方に読んでいただいています。山登りは楽しいですけど、きちんとした知識をもって臨まないと、ケガをしてしまったり危険な目に遭ってしまうことも多いかと思います。
登山での事故は、自分の体力を自覚していないことや、自分のレベルにあった登山計画を立てられないことなどに原因があるそうですが、そうならないためにはどうすればよいか、それを運動生理学の視点から丁寧に解説されています。登山の際の歩行方法や栄養補給の仕方、山登りのための体力をつけるトレーニング法まで網羅されていて、山に登る前に知っておきたい情報が満載です。
-安全確認しながら計画を立てるのも楽しいですよね。
そうですね。こういうことを事前に知っていると、一緒に山を登る仲間からも喜ばれると思います。
あとスポーツでは、『サッカー上達の科学 いやでも巧くなるトレーニングメソッド』(2016年)から、『武術「奥義」の科学―最強の身体技法 』(2010年)、『魚の行動習性を利用する 釣り入門―科学が明かした「水面下の生態」のすべて』(2011年)までバラエティー豊かです。
タンパク質を取りすぎてはいけない!?炭水化物を制限してはいけない!?「ランニングする」「ジムに通う」前に読む本
最近出たものでは、ランニングの本もあります。わたしの知り合いでも走っている人は多いですが、この時期はレースも多いですし、だんだん暖かくなってきて、走るのには気持ちのいい季節ですよね。
-そうですね。実は僕もランナーなんですよ。マラソン大会に出るというレベルではなくあくまでファンランナーで、相当スローペースで走ってます。
そうでしたか。実はブルーバックスで2月に出した『ランニングする前に読む本 最短で結果を出す科学的トレーニング』(2017年)では、そのスローペースでのジョギングをおすすめしているんです。「スロージョギング」という走法を提唱している田中宏暁先生の本なのですが、「フォアフット」という足指のつけ根から着地する走り方で、笑顔を保てるくらい楽なペースで走ることで、効率よくダイエットができて、初心者でもフルマラソンを完走できる体力を身につけることができるそうなのです。
–(帯を見て)「3ヶ月でフルマラソンが完走できる!」ですか。すごいですね。
登山の本でもランニングの本でも、さまざまなアプローチの類書がたくさんあります。その中で、ブルーバックスの特徴は「なぜそのトレーニングが良いのか」など、メカニズムまで掘り下げて紹介しているところにあると思います。
『ランニングする前に読む本』ではたとえば、走るためのエネルギーが体内でどのように生産されているのか、ということも生理学的に解説しています。
趣味として走るだけなら、そこまでの知識は必要ないという方もいらっしゃるかもしれませんが、そのメカニズムを知ることで、ゆっくり走るのがなぜいいのか、フルマラソンの途中でバテてしまうのはなぜなのか、ということまで理解できます。そうすれば、自分の走法をどう変えればより効率よく走れるのか、自分で考えて改善できるようになって、よりおもしろくなると思うんです。
–メカニズムを勉強したいと思います。目指せフルマラソン!
ランニングがご趣味ということは、スポーツジムにも行かれますか?
-たまに行きますね。鍛えているというほどではないのですが。
そうなんですね。ジム通いをしている方に向けた『ジムに通う人の栄養学』(2013年)や『ジムに通う前に読む本―スポーツ科学からみたトレーニング』(2010年)という本もあるんですよ。『ジムに通う人の栄養学』で紹介されていますが、脂肪を減らして筋肉をつけたいと思ったら、ジムで体を動かすだけではなくて食事の摂り方にも気をつけることで、より効果を上げることができるのです。
-筋肉をつけつつ痩せるためには、食事を控えて運動すればよいものだと思っていました。僕はプロテインのサプリを愛用しているのですが、科学的にはどうなんでしょう。
著者の岡村浩嗣先生はスポーツ栄養学、運動栄養学を専門とされているのですが、たとえば、筋肉をつけるために必ずしもサプリメントのプロテインは必要ではない、とおっしゃっています。運動してもタンパク質を摂れば摂るほど筋肉の合成が高まるわけではなく、食事からタンパク質が摂れていれば十分だそうです。ダイエットのために主食を減らす人も多いと思いますが、食事制限をしてエネルギーが不足しているときには、プロテインを摂取してもそれがエネルギー源として消費されてしまうので、筋肉づくりには利用されないそうなんです。
-そうなんですか…。炭水化物ダイエットが流行っていますが、それも筋肉を鍛えるためにはよくないということなのですね。
炭水化物の話については、『欧米人とはこんなに違った 日本人の「体質」 科学的事実が教える正しいがん・生活習慣病予防』(2016年)でも触れられています。
この本は、欧米人と日本人の体質を比較して、日本人に合った健康法や病気の予防法をわかりやすく紹介しています。この本の著者である奥田昌子先生は、日本人は欧米人よりもインスリンの分泌量が少ないため、きちんと炭水化物を摂らないと体によくない、と主張されています。そのほか、オリーブオイルも摂りすぎてしまうと生活習慣病につながってしまう、血圧を下げるためには塩分を控えればいいとは限らないなど、日本人の体質からみた食事の摂り方についてもわかります。
家電も操作できる!電子工作
—その他に趣味に関連する本はありますか?
そうですね、「ラズパイ」ってご存じですか。
−「ラズパイ」…?不勉強ですみません。知らないです。
「Raspberry Pi(ラズベリーパイ)」、日本では通称「ラズパイ」と呼ばれているのですが、イギリスで誕生した名刺サイズの「小さいパソコン」のことなんです。プログラミングの学習用に作られたものですが、いまファンが増えている電子工作用として人気を集めているんですよ。
昨年刊行した『カラー図解 最新 Raspberry Piで学ぶ電子工作 作って動かしてしくみがわかる』(2016年)は、2014年に刊行して好評だった『Raspberry Piで学ぶ電子工作』の内容をアップデートし、オールカラーにしてより学びやすくなっています。
演習プログラムを特設サイトからダウンロードできるので、プログラミング経験が浅い方でも大丈夫。いろいろ作品を作って自宅で遊んでいる編集者もいます(笑)。
−なるほど。楽しそうですね(笑)。具体的に「ラズパイ」はどういった用途で使われるものなんでしょうか?
たとえばスマホをリモコン代わりにしてLEDライトの色や明るさを制御したり、キャタピラーをつけてラジコンのように操作したりと、様々な電子工作ができるんです。少し慣れてきた方には、課題をこなしながら応用力を身につけられる『実例で学ぶRaspberry Pi電子工作 作りながら応用力を身につける』(2015年)もおすすめです。カメラで人の顔を認識して追跡するシステムや、テレビなどの家電を操作するリモコンを作れるようにもなりますよ。
−なるほど。僕は先日真冬にエアコンのリモコンを紛失してすごく焦りました。翌日出てきたのですが。最近リモコンに操作をゆだねている家電が多くて怖いですよね。
それは大変でしたね……。電子工作からは離れますが、家電がお好きな方には『すごい家電 いちばん身近な最先端技術』(2015年)も面白いですよ。
土鍋よりも美味しいご飯を炊きあげる炊飯器、水の透明度から衣類の汚れ具合を判断し、槽の回転方向や速度を変える洗濯機、人の動きを学習して効率的に冷暖房を効かせるエアコンなど、省エネでありながらもどんどん進化する最新の家電の技術がわかります。
−すごい時代ですね。先ほどの「ラズパイ」と組み合わせたら様々なことができそうですね。
ほかにも鉄道ファンにはたまらない『東京鉄道遺産』(2013年)、『図解・鉄道の科学―安全・快適・高速・省エネ運転のしくみ』(2006年)、『図解・地下鉄の科学―トンネル構造から車両のしくみまで』(2011年)、『図解・新幹線運行のメカニズム』(2012年)など、趣味をさらに深められるブルーバックスもたくさんご紹介したいのですが……今回はこのへんにしておきます。
-「少年の心」をくすぐる、豊富なラインナップですね!
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